Skinny Puppy - Cleanse Fold And Manipulate

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Released Year:1987

Record Label:Nettwerk, Capitol Records

 

Track Listing

  1.First Aid

  2.Addiction

  3.Shadow Cast

  4.Draining Faces

  5.The Mourn

  6.Second Tooth

  7.Tear Or Beat

  8.Deep Down Trauma Hounds

  9.Anger

10.Epilogue

 

 3rdアルバム。今作からDwayne Goettelが作曲にも参加しています。このアルバム、各所で「地味、暗い」とネガティブな評判が目に付きますが、個人的にアルバムトータルとしては2ndよりも好きです。前作を「押し」とするならば今作は「引き」。全体的には抑え気味ながらも、要所にきちんとスパイスを効かせた音作りで、曲作りにもかなり手馴れてきた雰囲気。前作で一気に広げた音像を収束・整理した上、ややメロディにとっ付きやすさが戻るなど、1stの頃の路線に揺り戻しがかかった印象があります。


 しかしそのメロは1stほど明るいものではなく、ジャケの通りモノクロの古典ホラー映画を髣髴とさせる雰囲気で、ある意味パピー史上最も「ゴス」に接近したアルバムかもしれません。#1におけるシアトリカルなストリングスの導入にも、そうした傾向を見出すことができます。また、#4,5といったインストも1stの頃のような清涼感は皆無で、くらーい不気味な雰囲気が漂っています。聴いているとあたかも無人の洋館をさまよっているかのような気分を味わえたり。この頃はバンドロゴもホラー映画調のフォントですしね。

 

 ただ、派手に暴れていた前作やこの後の全盛期と比べると、ノイズ成分や発狂ヴォーカルといった要素は控えめなので、物足りなく感じる方が多いのは仕方ないかもしれません。全10曲43分と短め(かつ3曲はインスト)であることも、地味な印象に拍車をかけている節があるような。コレに関しては、他のアルバムでも本来(LP盤)はそれぐらいのボリュームなのですが、ボートラが追加されてるのであまりそう感じないのかもしれません(逆にボートラが無いためにコンパクトにまとまっている点も、自分としては高ポイントなのですが...)。


 でも本作の収録曲、とてもライブ映えするんです。元々の曲構成がシンプルで明快な分、ライブ演奏でも原型を損なわず、むしろライブ特有の荒々しさが際立つように感じられます。初期の彼らは純粋にスタジオでの実験をそのまま音にしているような印象がありましたが、この頃からライブでの再現も念頭に置くようになったのかもしれません。この点については、本作に伴うツアーを音源化したライブ盤のレビューで詳しく触れたいと思います。


 ちなみにこのアルバム、ループ再生すると、#10の最後のノイズが#1のイントロにつながるようになっています。英語ではこういうのを"cyclical album"と呼ぶそうです*1。とはいっても、私が持っているCDでは無音部分が1秒ほどあったので、波形編集ソフトでそれをカットしてようやく切れ目無くつながるようになりましたが。このアルバムからのシングルB面曲まで2ndのボートラにまわされたのは、もしかしてこの構成を考慮してのこと?などと勝手に思っていたり。というわけで、iPodで再生しているとずっとループで聴いていられるアルバムです。

 

 Pick Up!:#4「Draining Faces」

 少々長めのインスト曲。ひたひたと不穏な導入部から徐々にノイズが増え、終盤は偏執的なボディへと変貌しますが、その静から動への転換が見事。途中何度か盛り上がりを作りつつも溜めに溜め、最後にじわーっと音量が上がっていくところはまさに背筋がぞくっとします。これはただのインタールード的なものではなく、むしろA面のハイライトといっても過言ではないかと。後にブレア・ウィッチ・プロジェクトのサントラにも収録されましたが、実に映画の雰囲気に嵌まった選曲といえるでしょう。

*1:Pink Floydの「狂気」なんかが有名でしょうか。