
Front 242と並んでベルジャンEBMの開祖と呼ばれるグループの、初期シングル4枚を全曲まとめたコンピレーション盤。今までレビューで散々名前を出しながらきちんと作品を取り上げたことがなかったので…。
このユニットはMarc Verhaeghen、Dirk Ivens、Eric van Wonterghem、Sandy Nijsの4人が結成したAbsolute Controlled Clinical Maniacsというグループが母体となっており、Sandy Nijsがグループを離れた後、名前をThe Klinikに短縮して1985年に活動をスタートしています。1987年にはEric van Wonterghemが脱退、1990年には方向性の違いからDirk Ivensも離脱してDive名義で活動を開始したため、以降はMarc Verhaeghenのソロ状態となっていました*1。2000年以降断続的にDirk Ivensがグループに戻り、2013年にはアルバムも1枚残しています。
本作の収録曲は#1~3が「Black Leather」(1990)、#4~7が「Fever」(1988)、#8~11が「Fear」(1987)、#12~14が「Pain And Pleasure」(1986)と、3人組ないし2人組だった頃の作品を遡っていく構成になっています。こういう並び順の場合、最初はいいけど後半にいくにつれてスカスカでつまらない…みたいなパターンがありがちですが、彼らの場合そういうこともなく1つの作品として聴くことができます。裏を返せば頑なに自分のスタイルを守っているので、あまり進化がないとも言えますが。
初期Skinny Puppyを指してSPK(の2nd)にそっくり、という評をよく見ますが、このアルバムを聴いているとSPKの「Leichenschrei」の正統後継者はこのThe Klinikだな、という感じがしてきます。ハーシュに歪んだヴォーカルとノイズ、ダークなシンセのコラボといえば両者ともよく似ているものの、パピーのそれはホラー映画からの引用で分かる通り聴き手を怖がらせるためのテクニックであり、どこかシアトリカルで演劇的。元々彼らは別名義でシンセポップ*2やパンクバンド*3をやっていたりして、パピー以外の方向性も器用にこなせる人たちだったりします。
対してクリニックは、他ジャンルの音を出そうとしたところでこれしかできない切実さがあるというか、「"素"でこれなんだな…」という病んだ空気をひしひしと感じます。ありがちなサンプリングによる味付けをほとんど使わないのも特徴的。アルバム後半の楽曲(#9,10,11,13辺り)などは、ミニマルな構造ながら空気の淀み具合が尋常じゃありません。特にタイトルトラックの#2は、彼ら特有のザワザワした強迫ヴォーカルと明滅するシンセサイザーが絡み合い、合わせ鏡のようにきらめく悪夢というアンビバレントな暗黒世界を描き出しています。
その他のパーカッシブな曲も、やたらガシャガシャとパーカッションが飛び交うのに強迫観念まみれで全然踊れない#3,6や、つんのめるリズムの#4など一筋縄ではいかないものが多いです。後のFLAに通じる緊張感を湛えた#5,8、スカスカなのに妙に耳に残る#12などはまだ比較的まっとうなEBMですが。特に#12は彼らの楽曲で唯一MVが制作されており、トレードマークである「白い包帯頭に黒のレザースーツ」*4という特異なファッションが拝めるので必見です。
本作含む彼らの音源はHands Productionsから2005年に再発されていますが、それも現在では入手困難。Appleでも配信されていますが、#3がシングル版ではなくアルバム版*5になっていたりするので要注意です。The KlinikとKlinikで別アーティスト扱いになっていたり、あの会社はいい加減こういうのを何とかしてもらいたいですね…。いずれにせよEBMマニアのみならず、リズミックノイズ/テクノイズ系が好きな方にもおススメな作品です。西欧の闇(病み)をとくとご覧あれ。
Released Year:1990
Record Label:Antler-Subway / Hands Productions
Track Listing
1. White Trash
2. Black Leather
3. Obsession
4. Fever
5. Moving Hands
6. Public Pressure
7. Desire
8. Memories
9. Nursery
10. Sick In Your Mind (Remix)
11. Fear
12. Go Back
13. Drowning In Your Sleep
14. Pain And Pleasure (Live)
Pick Up!:#10「Sick In Your Mind (Remix)」
1stアルバム「Sabotage」収録曲のリミックス。バックを這いまわる電子ノイズに象徴されるように、タイトル通りじわじわと神経を蝕まれるようなオーラが癖になりますね。後にDiveでもカヴァー(というかセルフリメイク)されてライブでも定番曲になっており、本人としても思い入れがあるようです。





