Skinny Puppy - VIVIsectVI

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Released Year:1988

Record Label:Nettwerk, Capitol Records

 

Track Listing

  1.Dogshit

  2.VX Gas Attack

  3.Harsh Stone White

  4.Human Disease (S.K.U.M.M.)

  5.Who's Laughing Now?

  6.Testure

  7.State Aid

  8.Hospital Waste

  9.Fritter (Stella's Home)

10.Yes He Ran

11.Punk in Park Zoo's

12.The Second Opinion

13.Funguss 

 

 初期の彼らの到達点であり、ここからがいよいよ彼らの本領発揮。1stの清涼感あるシンセ、2ndの変則的なビート感、3rdの暗黒で淀んだ空気を融合させ、ノイズの海で漂白させたような感じ...とでも言いましょうか。これまでのダークさはそのままに、ビートはより機械的に、サンプリングはより緻密に、ノイズはより苛烈に、そして曲構造はより複雑怪奇に変貌。タガどころか関節が外れたかのような独特の異形っぷりは、もはや「エレボディ」というより「エレクトロニック・ジャンク」という表現がしっくりくる内容となっています。

 

 のっけからハーシュノイズで幕を開ける#1は、オーガさんのVo.も甲高く叫びまくりで、スローテンポながら掴みは抜群。#4は腐りきったジャンクビートが突如整然としたボディビートへと転換する構成が見事。アルバム本編を締めるインスト曲#9での、サンプリングボイスを交えた不穏な静寂に強烈なビートが切り込んでくる展開などは、驚異・戦慄という二重の意味で鳥肌ものです。この曲をはじめとするホラー映画風の不気味な空気感は、3rdアルバムを通過したからこそ演出できたものでしょう*1

 

 こうして説明していくと難解な内容かのように思われそうですが、ネット上での評判を見ていると「ポップになった」「聴きやすくなった」という声が多いです。これはつまり、以前より「わかりやすい壊れ方」をするようになった、という意味合いではないかと。ポップスとは違う、"過激な音楽"としての判り易さといいますか...。

 

 3rdまでのパピーは、"80年代の"ポストパンク・インダストリアル然とした、一種冷めたような淡々とした空気感を引きずっていた部分があり、そこがインダストリアルメタルを好む層などからすると「わかりにくい」ポイントになっていたと思われます。しかし本作における、一聴しただけで気付けてしまう音の強烈さ・パラノイアな構成は、明らかにそれ以前の作風とは一線を画し、90年代以降のインダストリアルに繋がるものです。

 

 それに加え、ドラッグ中毒をテーマとした#3や、前作からのシングル曲"Addiction"の発展形ともいえる#6では、以前からの持ち味だった寂寥感や哀愁といったものも健在で、喧しいだけで終わらせないフックを与えています。これらの曲でベールのように被せられたシンセの音は、同時にケミカルで無機質な印象も高めており、先述した狂気と相俟って「人ならざるもの」感を強く打ち出しているように思えますね。ゾンビで例えると、3rd以前が墓地の地面の下から這い出てくる、有機的に"腐敗"したタイプ、本作は廃工場・廃病院から出現する、無機的に"汚染"されたタイプ...つまり「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」と「バイオハザード」の違いといったところでしょうか(?)。

 

 #10~13はCDのみのボートラで、シングルB面曲が中心ということもあってやや実験的。そんな中でも#11では、後のリズミックノイズにつながるような音を鳴らしていたりするのが興味深いです*2。また、B面曲でない#13はCD版のみの収録。


 音以外にも目を向けると、これ以降顕著になる傾向として、オーガさんによる言葉遊びというか造語遊びが挙げられます。まず、アルバムタイトルはVivisecion(生体解剖)と666(ローマ数字にするとVIVIVI)を引っかけていますし、TestureはこれまたTestとTortureをかけた造語(PVもそのまんまTest+Tortureな内容)。本作のコンセプトとして"Anti-Vivisection"(反動物実験)が根底にあるのは有名ですが、そういったものを曲に落とし込む手法として造語が効果的に使用されていますね。

 

 こうしたメッセージ性が明確になっていくにつれて、ステージパフォーマンスがさらに大がかり且つ過激になり始めたのもこの頃。当時の映像は不鮮明ながらネット上で見ることができますが、

・オーガさんが白衣を着て犬の死体(*どう見てもぬいぐるみ)を弄ぶ

​             ↓

・突然謎の被り物をした研究者?(*スタッフ)が現れオーガさんを拘束

​             ↓
・ステージ上に金属製の檻?が組まれ、研究者がオーガさんを上に座らせる

​             ↓
・オーガさんが檻の上から飛び降りて逆さ吊りに

​             ↓
・なぜか拘束が解け、半狂乱になったオーガさんが客席に乱入...しかけたところを研究者が取り押さえて退場。ライブ本編は終了し、アンコールへ

というのが、クライマックスにおける一連の流れです*3。一応、動物実験をしていた研究者が怪物化した動物によって実験台にされる...という"Testure"のPVと同じ流れにはなっているんですが、こうやって文章化しても意味不明だと思うので、実際の様子はぜひ各位で確認してみてください(投げやり)。

 

 ちなみに、不気味でありながら美しいアートワークは例によってSteven R. Gilmore作ですが、これはブリティッシュコロンビア大学に勤めていたGilmore氏の友人から、廃棄されるレントゲン写真を横流ししてもらって製作したそうな*4。人間の手のレントゲン写真をバラバラに解体・再構築して作り上げたらしいですが、果たしてどこをどう弄ったらこうなるのか...。コンセプト面だけでなく、"過剰なカットアップ・コラージュ"という意味でもアルバムの内容に忠実な、名ジャケットだと思います。

 

 1988年という「Electronic Body Music」が提唱された年に、Ministryの3rdと並んで次なる一手を投じていた彼らの革新性には驚かされますし、このアルバムが持つ衝撃度は30年が経った今もなお有効ではないかと思っています(流石に音圧とかの面では劣りますけど...)。"EBMグループ"としての彼らの集大成。

 

 ちなみにNEWSWAVE誌のレビューでは「内容は素晴らしいが、方法論としてはMinistryが"Twitch"で見せたものと変わらない。ついにEBMも成熟を迎えたのか」という趣旨のことが書かれていたりします*5。その点に関しては彼らも自覚していたのか、以降はEBMという範疇を飛び越えて、さらに孤高の道を突き進むこととなります。それについてはまた次のレビューで。

 

 Pick Up!:#1「Dogshit」

 本文にも書きましたが、ノイジーな凶暴さと取っつき易さが同居したアルバムのリードトラック。規則的なようで微妙に反復を避けながら進んでいくリズムも癖になりますが、なんといっても中盤にギターが入ってからの展開が最高に盛り上がります。ここのギターの使い方、ちょっと"One Time One Place"と似てるかも。

*1:余談ですが、途中の台詞パートが「あ、バイト出ません」と聞こえるのは私だけ...?

*2:実はこの曲、シングルの"Censor"収録版とはバージョンが異なります。といってもアウトロの処理が微妙に違うだけですが...。言われなきゃ気付かないレベルの差異です。

*3:これのバックでは、cEvinとDwayneによるカオスな即興演奏が繰り広げられます。

*4:英語版wikiより。https://en.wikipedia.org/wiki/VIVIsectVI#Artwork

*5:確かに#2のドラムパターンが"Over The Shoulder"とよく似ていたりと、影響された部分もあるとは思いますが...。

The Young Gods - L'Eau Rouge

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Released Year:1989

Record Label:Play It Again Sam

 

Track Listing

  1.La Fille De La Mort

  2.Rue Des Tempêtes

  3.L'Eau Rouge

  4.Charlottey

  5.Longue Route

  6.Crier Les Chiens

  7.Ville Nôtre

  8.Les Enfants

  9.L'Amourir

10.Pas Mal

 

 スイスのインダストリアルロックバンドの2ndアルバム。このバンドはヴォーカル、サンプラー、ドラマーの3人組で、他の楽器(ギターやベース)は全部サンプラーで鳴らしているという変わったグループです。

 

  バンド名はSwansのEPが由来、プロデュースはRoli Mosimann(初期Swansのドラマー)、ヴォーカルはMichael Gira直系のダミ声ということで、かなりSwansをリスペクトしているようですが、実際の音楽性はそこまでジャンクかつノイジーなわけでもないです。どちらかといえばRoli MosimannとJ.G.Thirlwellのユニット、Wisebloodに近い印象。特にタイトで硬質なドラムの音処理はそっくりで、デビュー当時「Wisebloodの変名か?」と言われていた...という逸話にも納得です。Roli Mosimannという人はロック全般を手がける総合プロデューサー的なところがあるので、関わったバンド全てがインダストリアルな仕上がりになるわけでもないんですが*1、このThe Young Godsはその中でも、比較的Swansとの繋がりが判りやすいケースではないかと思います。

 

 そして、ヴォーカルとドラム以外の全てを任されているサンプラーですが、これがまた千手観音のような活躍を見せています。ゴリゴリとしたベースは前述の強力なドラムに負けないグルーヴを生み出していますし、神経質なギターとストリングスを自由自在に入れ替えて、巧みに焦燥感を煽る手法にはただ唸らされるばかり。時々挿入される逆回転や小刻みな継ぎ接ぎなど、サンプラー(=人力演奏による再現を考慮しなくてよい)というアドバンテージをフルに活用していますね。ギュルギュル唸るギターの早弾きソロも、この人たちにかかれば効果的なサンプリングノイズに早変わりです。

 

 また、#1,4,8ではオペラというかキャバレーというか、演劇的な要素も取り入れており、大仰なオーケストレーションはFoetusやPigを連想させる部分もあります*2。当然これもサンプラーの仕事。彼らはこの後、クルト・ヴァイルのカバーアルバムで丸々1枚オペラな音楽性を披露するのですが、この頃からその布石は打たれていたようですね。

 

 ただ、こうした雑多な音楽性やヴォーカルの野太い声が、独特の個性を演出する反面で聴く人を選ぶ要因になっているのも事実かなと。#4のとぼけた場末感にしろ、#5の猪突猛進な勢いにしろ、どことなくコミカルというか掴みどころの無さがあって、米英のバンドとはちょっと違うセンスを感じます。さらに、この頃は歌詞や曲タイトルもまだフランス語*3で、この辺も好みが別れるところかも。

 

 あとは既に各所で指摘されていますが、この人たち、音に"邪念"がほとんど感じられません。同時期のインダストリアル系にありがちな、ノイズや打ち込みに乗せた感情の発露が皆無。仏語の歌詞も翻訳にかけてみると、"Everyone dances the red water"だとか"We made a long journey, Never it stops"だとかで、かなり浮世離れした雰囲気。どこか醒めているというか、仙人のように達観した印象を受けます。したがって、NINその他のごとく、音楽にネガティブな感情を託したい人にはあまりお勧めできません。

 

 とはいえ、この後の彼らがどんどんインダストリアルという枠を飛び越えてポストロックの域にまで行ってしまう(その頃の音源も良いんですが)ことを考えると、SwansやFoetusといった先達の影響をうまく噛み砕き、"エレクトロニクスを駆使したロック"に落とし込んでいる本作は、まだ80年代インダストリアルとの繋がりが分かり易くて個人的には好きです。彼らのキャリアの中で見れば発展途上ではありますが、ジャンク寄りのインダストリアル好きなら押さえておいて損はないかと。 

  

 Pick Up!:#10「Pas Mal

 #9,10はシングルからの曲でCD版のみのボートラとなっています。この2曲、どちらもアルバム本編よりもストレートにボディを打ち出していて甲乙つけがたい良さがあるのですが、僅差でこちらをチョイス。引き締まったビート中心のシンプルな構成はさながら「ギターを導入したWiseblood」という趣で、単調ながらも疾走するスピード感が心地よいです。シングルのB面にしとくのはもったいない出来映え。

*1:かのマリリン・マンソンの1stにもエンジニアとして参加していますが、少なくともNYジャンク的な要素は皆無です。あれはトレントさんがプロデュースという点も大きいと思いますが。

*2:Allmusicのレビューhttps://www.allmusic.com/album/l-eau-rouge-red-water-mw0000654523では、"traditional French cabaret tunes"と言及されていたり。学が無いものでこれ以上言及できないのが辛いですが...。

*3:後に、世界的な人気の獲得に伴って英語を使うようになります。

Skinny Puppy - Ain't It Dead Yet?

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Released Year:1989(VHS)/1991(CD)

Record Label:Nettwerk

 

Track Listing

  1.Intro

  2.Anger

  3.The Choke

  4.Addiction

  5.Assimilate

  6.First Aid

  7.Dig It

  8.One Time One Place

  9.Deep Down Trauma Hounds

10.Chainsaw

11.Brap

12.Smothered Hope

 

 パピー初の公式ライブアルバム。彼らは何度かライブアルバムを出していますが、Dwayne Goettel存命時のライブがフルセットで記録されているのはこのアルバムだけです*1。公演は87年の"Cleanse Fold and Manipulate Tour"からの録音ですが、リリースは2年遅れて89年、しかも当初はVHSのみでの発売でした。続いて91年にCD化、その後2001年にはDVD化もされています。

 

 ちなみにこのツアー、3rdアルバムの名を掲げておきながらアルバム発売前にスタートしたため、この公演の時点ではセットリストの半分近くは未発表の新曲だった模様*2。バンドは3rdアルバム発表後、翌年になってから改めて"Head Trauma tour"を行っています。ツアー前半ではカナダ・アメリカを廻り、後半ではヨーロッパを廻るという行程だったみたいですね。

 

 この手のグループでは、ライブと言いつつもほとんどカラオケじゃん?というパターンが多々見受けられますが、このアルバムはわりとしっかり「ライブ」してます。基本的なバックトラックはテープに頼りつつ、随所で人力のパーカッションやギターを導入。これによって、原曲を忠実に再現しながらも生々しさを加えることに成功しています。また、シンセやギターは全てエフェクター(?)を駆使してノイズ発生源に徹しており、全体的にザワザワとした心地よい耳触りの悪さ(意味不明)を演出。オーガさんも唄いながらボコーダーらしきものを弄り、声までも音のパーツとして利用していたり。また、ドラム缶を利用したパーカッションも迫力満点で、#2,9などでの高圧ビートがいっそう際立っています。

 

 さらに特筆されるのがインプロビゼーション(即興演奏)の巧みさ。曲間部分が特に顕著ですが、シンセの残響音やサンプリングボイスを器用に反復、あるいは変容させてノイズを生み出し、上手く次の曲へと繋いでいます。さらに終盤の#11では、SPKばりに火花を散らす本格ノイズ・インプロを披露しています。ピュアノイズ大好き人間にとってはここだけで十分なのかもしれませんが、こうした即興的要素が曲に緊張感を与えると同時に、より凶暴さを高めてもいるんですね。以前TLでも話題になったんですが、このようにエレクトロニクスを多用しつつも、あくまで人の手によって為されるスリリングな即興演奏こそが、初期インダストリアル(特にThrobbing Gristle)の系譜を踏む要素ではないかと思っていたり。

 

 またオーガさんのVo.もスタジオ版に比べてテンションがup。パピーお得意の血みどろパフォーマンスを繰り広げながらということもあってか、より狂気的で凄みのあるウゲウゲボイスで魅せてくれます。たまに挿入される演説というか朗読もいい感じに不気味でクール。その一方で、#7では歌い出しの入りをミスって上手いこと誤魔化す...なんていうお茶目な一幕もあったり(笑)。こういうハプニングもライブならではですね。

 

 これらの要素によって、トータルで曲の迫力や凄みが強化された結果、特に地味といわれがちな3rdの曲が見違えるほどカッコ良くなった印象があります。#4はこの先のライブでも定番曲となりますが、それも納得といったところ。リズミカルなビート感とメロディアスな哀愁のバランスが素晴らしいです。低音で囁くように歌っていたスタジオ版に比べ、オクターブ上で叫ぶように歌唱法を変えているのも大きいと思いますが...。しばしば「大人しい・控えめ」と言われがちな初期と、ぶっ壊れた中期とを繋ぐ、ある種のミッシングリンクのような内容と言えるかもしれません。

 

 今までの文章でもチラチラ書いてきましたが、やはりパピーのライブは派手なパフォーマンスも含めたトータルエンターテイメントなので、一度は映像で確認して頂きたいところ。ステージ上を動き回るオーガさんはもちろんのこと、映る度に担当楽器が変わるケヴィン・キーの千手観音なマルチプレイヤーぶりや、黙々とノイズを繰り出すまだ容姿端麗な*3ゴエテル、さらにオープニングのホラー映画風クレジットなど、見所がたくさんあります。その一方で、改めてCDで聴いてみると、視覚情報が強烈すぎるあまり、映像を見ているだけでは気付かなかった演奏面での面白さも再発見できたので、ファンとしては映像と音源の両方で鑑賞してみることをお勧めしたいです。

 

 ちなみに、91年に発売されたCDの初回盤は、ミスプレスによりすべての楽曲がトラック分割されずに1曲に纏まってしまっているほか、ケース裏面のトラックリストも一部間違っています*4。私はたまたまこれに当たってしまったので、波形編集ソフトで自分でトラック分割をするはめになりました()。まぁ致命的な問題があるわけじゃないんで別にいいんですけど。

 

Pick Up!:#2「Anger」

 イントロに続きオープニングを飾る1曲。3rdアルバムでは歌詞がほとんど聴き取れないよくわからん曲...という印象が強かったですが、このライブ版での聴きどころはやはり、後半から叩き込まれるケヴィンの生ドラムでしょう。一応原曲に沿ったアレンジなんですが、打ち込みと生ドラムの音質差が顕著になったことで、曲の流れにメリハリがついた印象。オリジナルから一番見違えた曲と言ってもいいかもしれません。視覚面でも、布張りの箱(?)の中にのた打ち回るオーガさんのシルエットが浮かび上がる演出が印象的。

*1:曲単位では、シングルのB面やレアトラック集として散発的に発表されています。

*2:この公演の録音が5/31、3rdアルバムの発売が6/25です。

*3:晩年の彼はドラッグに蝕まれた結果、急激に容姿が老化&痛々しくなってしまっていたので。最初は美青年だったのに...。

*4:出典→Skinny Puppy - Ain't It Dead Yet? (CD, Album) | Discogs

Pankow - Gisela

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Released Year:1989

Record Label:Contempo Records, Wax Trax!, Cashbeat, LD Records

 

Track Listing

  1.I'm Lost, Little Girl

  2.Warm Leatherette

  3.Die Beine Von Dolores

  4.Let Me Be Stalin

  5.Pankow's Rotkäppchen

  6.Me & My Ding Dong

  7.Happy As The Horses Shite

  8.Deutsches Bier

  9.Madness (Danke Gisela)

10.Follow Me In Suicide (Lenin)

 

 イタリアのEBMグループの3rdアルバム。

 

 最近では、Adrian Sherwoodの仕事を纏めたアーカイブ集に取り上げられたりと、On-Uとの繋がりが強調されがちな彼ら。2ndではアルバム丸ごとシャーウッドにミキシングを頼んでいたようですが、自分たちなりのテクニックが確立したのか、本作では3曲(#4,8,9)のみでの参加に留まっています。そのせいか、そこまでOn-Uらしい質感というわけでもなく、もっとエッジの効いたシャープな音という印象を受けました。どちらかというと、NINの"Sin"(シングル盤のバージョン)とかに近いかも。これぞEBM!といった趣の、芯の太いボディビートは確かにかっこいい。

 

 ただそれ以上に、イタリア人特有の"アク"や個性が非常に強く感じられる内容です...というか、変。明るく猥雑なアメリカ、陰湿で皮肉屋なイギリス、生真面目で汗臭いドイツのどれとも違う、深刻なんだか間抜けなんだかわからない独特の勢いがあります。政治的なテーマは曲タイトルからもビシビシ伝わってきますし、そもそもグループ名が旧・東ドイツの政治的中枢だったベルリンの行政区*1という事からも、冷戦下という空気を感じずにはいられないんですが...。出だしからアイ♪アイ♪アイ♪アイ♪な#1や、ヴォーカルが変態的な#8、唐突にマーチング風の#10など、やっぱり何かズレてる。

 

 そんなわけで最初は「ん?ん?」ってな感じでいまいち入り込めなかったんですが、当時のライブ映像を見たらかなり印象が変わりました。淡々とビートを打ち出すシンセドラムの前で、エレクトロ系らしからぬ長髪の兄ちゃんが飛び跳ねながら熱いアジテートをかます...まさに「激しすぎて30分しか持たない」と言われたNitzer Ebbを髣髴とさせるパフォーマンスです。意外と熱血系な人たちだったんですね。このライブ映像を見てから、アルバム中の奇妙な印象は狙ってやっているのではなく、本人たちが100%シリアスにやった結果として滲み出たおかしさだという気がしてきました。当の本人は大真面目なのに傍から見ると笑っちゃう...というケース、わりとありますよね。

 

 また、入り込むのに時間がかかった分、慣れてくると先述の"変"なポイントがそのまま中毒性を発揮して病みつきになる気がします。硬派でダーク、狂気的、破壊的なインダストリアル・ボディはいくらでもいますが、こういう変態チックな路線は確かにあまり類を見ないタイプの個性。 ある意味、DAFの持っていた変態性・コミカル成分を最も色濃く受け継いだグループと言えるかもしれません。特に#6などは、彼ら特有のコミカルさとEBMとしての肉感的な重さがバランスよく融合した曲だと思います。例によって入手困難ではありますが、一聴の価値あり!なアルバム。

 

 Pick Up!:#2「Warm Leatherette」

 Muteの総帥Daniel Millerの1人プロジェクト、The Normalのカヴァー。この曲はJoy Divisionの"Isolation"と並び、EBM界隈でよくカヴァーされるエレクトロミュージックのクラシックとなっています。このPankowバージョンは原曲よりBPMも上がって、超筋肉質な猪突猛進ボディに。カンカン鳴る金属的なスネアと隙間無く充填されたハンマービート、ビニョビニョシンベの組み合わせで押しまくります。この勢いは素晴らしいですね。

*1:東ドイツの体制を揶揄する意味でも使われたとか。日本で言うところの"霞ヶ関"的なニュアンス...といったところですかね。

Download - The Eyes Of Stanley Pain

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Released Year:1996

Record Label:Nettwerk, Off Beat, Subconscious Communications

 

Track Listing

  1.Suni C

  2.Possession

  3.The Turin Cloud

  4.Glassblower

  5.H Sien Influence

  6.Base Metal

  7.Collision

  8.Sidewinder

  9.Outafter

10.Killfly

11.Separate

12.Seven Plagues

13.Fire This Ground (Puppy Gristle Part 1)

14.The Eyes Of Stanley Pain

 

 Skinny Puppy崩壊後、cEvin Keyが始めたユニットの2ndアルバム。以前書いた通り、パピーのサイドプロジェクトに本家のようなぶっ壊れた音はあまり期待できないのですが、そういう意味だと実はこのDownloadが、最もパピーに近い狂気を内包しているかもしれません。音を構成するパーツは全く異なりますが。

 

 元々このDownloadというプロジェクトは、泥沼化し膠着状態に陥った"The Process"のレコーディングから逃避し、パピーで没になったアイディアやマテリアルを、レーベルの圧力も無い環境下で自由に形にする場として始まった模様。要はストレス発散&自己実現をするセラピーの場と言ったところでしょうか*1。バンドは93年から95年にかけ、cEvin Key、Dwayne Goettel、Mark Spybey、Phil Western*2の4人を中心にジャムセッションを繰り返し、発売を前提としない膨大な量のマテリアルを録音。Downloadの3rdアルバム以前の音源は、全てこの時期に録音されたものが基となっています。

 

 そういうわけで、今回取り上げる2ndアルバムは、中身としては1stアルバム"Furnace"と兄弟のような立ち位置の作品となっています。ただし、1stに比べるとほんの少しだけ愛想が良くなったというか、#3,4,9など、キャッチーな部分が顔を覗かせる部分も出てきました(それでも難解であることに変わりはありませんが)。1stの日本盤ライナーノーツでも触れられていますが、単なるセラピーとしての実験場ではなく、ライブツアーも行う自主レーベルの看板アーティストとしての自覚...みたいなものも芽生えていたのかもしれません。

 

 とはいえ、全体的にはAutechreAphex TwinSkinny Puppyが融合したような、IDM寄りのカオスなエレクトロ・インダストリアルです。ノリノリのダンスビートが始まったかと思えば縦横無尽に飛び交う電子音が曲を覆い尽くし、透き通るようなメロディが聞こえたと思ったらドロドロのグロテスクなサンプリングが襲い来るという、変幻自在のびっくり箱状態。まるで相手の情報をコピーできる不定形のスライム型エイリアンと対面させられているみたいです(なんじゃそりゃ)。とはいえそこはcEvin Key、狂気とポップを紙一重で綱渡りする巧みなセンスは健在です。時折ハッとさせられるような美しい旋律を挟みこんでくるんですが、その塩梅が絶妙なんですよね*3。楽曲単位で見ても、カクカクした機械音がジャンクに踊る#4から、奇妙な浮遊感のあるアンビエント風味の#6まで、表情が様々でメリハリも効いているので、慣れてしまえば意外と普通に楽しむことが出来ます。

 

 そしてヴォーカルの存在も重要。到底"歌"と呼べるようなものではありませんが、大半の曲でMark Spybeyのザワザワしたヴォイスが挿入されています。この不気味な声の存在が、ただのIDMに留まらない、歪なインダストリアルとしての側面をより強調しているような印象がありますね。その他Genesis P. Orridgeも数曲で参加していますが、一聴してそれと判る独特の個性は相変わらず。その1つである#5の歌詞は彼の作詞なのかよく判りませんが、レコーディングの作業過程をそのまま歌ったような内容なのがおもしろいところ。

 

 アルバム終盤の#13は、パピーのメンバー3人にジェネP、さらに同じくTGのChris Carterも参加したインプロビゼーション音源をエディットしたもので、フルの演奏(40分超え!)は2002年に"Puppy Gristle"という形でリリースされています。レアアイテムっぽいのでいつかは聴いてみたい所ですが、わずか5分でも十分狂ってて恐ろしいのに、これを40分も聴かされて精神の平衡を保っていられるかが不安ですね...(大げさ)。

 

 ちなみに、この2ndアルバムはバンダイから日本盤も発売されています。ライナーノーツはこの界隈ではおなじみ小野島氏が担当されているのですが、前身プロジェクトとして当然Skinny Puppyについての解説も書かれており、マニアとしては日本語で彼らを語る数少ない記録として見逃せません*4。また当時(96年頃)の小野島氏は、メタル化したMinistry及び類型化したインダストリアルメタルブームに愛想を尽かしていた節があり*5、それらから距離を置きつつ孤高の路線を攻めた本作に並々ならぬ期待を寄せているのが伝わってきて興味深いです。

 

 アルバム全体が長尺なのと、曲展開の複雑さから取っつきにくい部分はあるかもしれませんが、最初は作業用BGMにしつつ、キャッチーな"掴み"の部分を少しずつ発見していくと、じわじわ良さが判ってくるかもしれません。もちろんIDM系が好きな方にもお勧め。

 

 Pick Up!:#9「Outafter」

 このアルバムの中ではかなりポップな質感の曲。それもそのはず、この曲は元々、Skinny Puppyの曲として映画「The Crow」のサントラに提供される予定だったものの、オーガさんが"パピーとしてはテクノっぽすぎる"という理由でお蔵入りにしてしまった...という経緯を持っています。主演のブランドン・リーはパピーのファンで、この曲も気に入っていたという話もあり、オーガさんは後にこのことを後悔したんだとか...。*6 ちなみにこの時、オーガさんは映画に出演する端役としてオーディションを受けていたらしいです。といっても、ステージと違う感覚にはだいぶ戸惑った模様。*7

*1:日本盤のライナーノーツ曰く、"「スキニー内部のトラブルによる極度の緊張感やプレッシャーから逃れるために、親しい友人同志のプロジェクトであるダウンロードが必要だった」とケヴィン・キーは語っている。"だそうです。

*2:残念なことに、2019年2月9日に亡くなられた模様。→Canadian Electronic Artist, Engineer Phil Western Dies at 47; Bryan Adams & Skinny Puppy's cEvin Key React | Billboard 死因は"accidental drug overdose"らしく、ゴエテルの件もあるだけになお心が痛みます...。R.I.P.

*3:#1のアウトロとかが良い例。

*4:2004年の復活作が日本盤で出るまでは、数少ない日本語でのパピーの解説文だったはず。

*5:ミュージックマガジンのインダストリアルメタル特集に推薦盤としてPanteraやHelmetを推したり、クロスビートのテクノ特集で"元ミニストリー評論家"を自称するなどされていた模様。

*6:ブランドン・リーは撮影中の事故で亡くなっているので、デモ音源か何かを聞いたのではないかと推測。

*7:この話の出典→http://home.earthlink.net/~coreygoldberg/download/outafter.htm 

  およびインタビュー→http://regenmag.com/interviews/skinny-puppy-interview-shapes-arms-pt-2/

Die Klute - Planet Fear

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Released Year:2019

Record Label:Cleopatra

 

Track Listing

  1. If I Die

  2. Out Of Control

  3.The Hangman

  4.Rich Kid Loser

  5.For Nothing

  6.Human Error

  7.It's All In Vain

  8.Born For A Cause

  9.Infectious

10.Push The Limit

11.She Watch Channel Zero?!

12.Mofo

 

 Die KruppsのJürgen Engler、Leæther Strip/KlutæのClaus Larsen、そしてFear FactoryのDino Cazaresという、超・強面な3人が集結したインダストリアルメタルユニット。どういった経緯で結成に至ったのかは不明ですが、ユルゲンとクラウスは90年代からCleopatra繋がりで交流があった同志*1ですし、それこそ2016年の来日公演で共演していたのは記憶に新しい所。ディーノはクラウスとの繋がりはあまり無かったと思いますが、クルップスとフィアファクはライブで何度か共演したことがあったようで、その縁で声がかかったのかもしれません。

 

 最初に結成がアナウンスされたのが昨年の7月末、同時にPVの撮影風景なども公開*2されたりして、(ごく一部の界隈で)注目と期待を集めていました。そして、今年の1月半ばに先行曲#7が公開されますが、正直な話、この時点での私は印象は「あ、コレあかんやつや」という感じでした。特に、一聴して判るギターが引っ込みすぎな点に関しては、YouTubeのコメント欄もほぼこれ一色といった様子で、公開からわずか1週間で"皆様の要望にお答えしてギターの音大きくしましたバージョン"が公開される*3という異例(?)の事態に。「インダストリアル系のスーパーグループに当たり無し」という、お決まりのジンクスがまたも的中するかと思われました。

 

 しかし、2月に入っていざアルバムが発売となったので試聴してみると...あら意外といい感じ。既にネット上で囁かれていた、「先行シングルが一番ギター弱い曲説」を裏付けるように、しっかりディーノの存在が判るミキシングです*4。全体的にリフもシンプルながら即効性のあるわりと私好みな感じで、ひとまず、大ハズレだろうという当初の予想は良い意味で裏切られることとなりました。ただ、このプロジェクトに期待していた人全員が満足する内容では無いな...と思ったのも事実。

 

 端的に表現するなら、メタルギターを全面的に導入しつつもあくまでエレクトロニックな要素が主導権を握っている、いわゆる"ボディメタル"です。「鳴らしている音の大きさ」でいうと【 クラウスディーノユルゲン 】ですが、「持ち込んだ音楽性」でいうと【 ユルゲンクラウスディーノ 】という配分になっていると思います。クレジットを見る限り、ユルゲンとクラウスが共同で打ち込みを担当していますが、私の勝手な推測ではクラウスは打ち込み、ディーノはギター、そしてユルゲンは総合プロデューサー...といった立ち位置で製作を進めたのではないかと。

 

 そういう意味で最初は「これ、まんま90年代中期のクルップスでは?」とも思ったのですが、よくよく考えてみるとその頃のクルップスの方がまだ叙情的でHR/HMっぽいんですよね*5。それに比べて本作は、既に先行しているレビューにもある通り、良くも悪くもとにかく単調。ここには(90年代の)レザストやクルートのグロテスクな禍々しさも、フィアファクの男臭いメロディもありません。そういった意味で、この3人の音楽性の化学反応を期待していた人...特にフィアファクのファンにとっては、ガッカリな内容だったというのはよくわかります。

 

 じゃあ中身は完全にゴミなのかというと、個人的にはこれがまぁまぁ良いんですよね。確かにバラエティには乏しいけれど、#3,4,6,12といった曲のスピード感は素直に好きだし、#2,9でのミドルテンポ寄りなリフもカッコ良いです。唯一の変化球は終盤の#11。これはPublic Enemyのカヴァーなんですが、原曲がSlayerのAngel of Deathのリフを丸々サンプリングしていたのを、上手いことシンベに置き換えつつSlayerの再演にならないようアレンジしているのが面白いです*6。でも全体的には、凝った曲構成や捻った展開の無い、シンプルな初期衝動の塊のような作品とも言えるかもしれません。そういう点ではある意味"パンキッシュ"とすら表現できそう。この「とりあえず3人で音出しました」感を許容できるかどうかが、本作への評価の分かれ目でしょう。

 

 つまるところ本作は、2017年に出たKlutæのアルバム"Black Piranha"に、生のメタルギターを足しただけの作品です。ただし、そのギターリフによって楽曲の説得力が大きく向上しています。"Black Piranha"も曲自体は悪くないと思うんですが、肝心のアレンジがエレクトロ中心で何故わざわざKlutæ名義で出したのかよく判らなかったですし、かつてのKluteのように強烈なサンプリングギターやノイズも無く、いまいちパッとしない結果に終わっていた感がありました*7。それに比べるとこの"Planet Fear"は、ザクザクしたギターの存在感によって、かつてクラウスが持っていた攻撃性や緊張感、そして音の凄みが少しだけ戻ってきた印象があります*8。このアルバムもベーシックなトラックは基本クラウスが作っていると思うのですが、やはり彼の完全な単独作業であるレザスト・クルートには無い、ディーノという"異物"の存在が、多少プラスに働いたのではないかと。

 

 近年、EBMやインダストリアルが一部界隈で再評価されている気がしますが、その実際は初期Front 242やKlinikの系統にあるシンセウェイブに近いEBM、あるいはSwansやGodfleshの系統にあるジャンクでノイジーなロック・ポストメタル...といった方向にトレンドが集中しているように思えます*9。そういった状況下で、90年代に流行したEBM+メタルギターという図式は意外と空白帯になっていたと思うのですが、今回のDie Kluteは見事にその穴を埋めてきたなという感じです。特に最近のクルップスも「ボディモードの時はボディ、メタルモードの時はメタル」という感じで、全編こういうバランスのアルバムはしばらく出していない気がするので...。このように、思わぬ形で90年代型"ボディメタル"の再来を拝めただけでも、自分のような懐古趣味者にとっては意義のあるコラボだったのではないかなと思っていたり*10

 

 誰もを唸らせる普遍的な完成度というわけではありませんが、悲惨な結果に終わることが多いインダストリアル系スーパーグループの中で見れば、まぁ及第点と言えるクオリティには達していると思います。もう少しアレンジに時間をかければまた仕上がりが違ったのかもしれませんが、逆に大御所らしからぬフレッシュな勢いを楽しむのが正解なのかも。個人的には、下手に色々やろうとしてグダグダになるよりは、勢いだけで突っ走るこの方向性で正解だったと思っています。肉感的なビートと美味しいリフだけあれば満足!という人は、とりあえず聴いてみても損は無いのでは。

 

Pick Up!:#9「Infectious」

 ほとんどが疾走系のアルバム中で、良いアクセントとなっているミドルテンポのグルーヴィな曲。このいかにもワルそうな感じのリフが結構好きです。せっかく少し捻りを加えてるんだから、もっとメタパーを入れるなりノイズを差し込むなりして欲しかった感じもありますが...。

*1:インタビューでのユルゲン曰く、"We are old buddies"とのこと。ソースはこちら→DieKlute (Dino Cazares) Premiere Video Featuring William Shatner

*2:動画はコチラ→https://www.youtube.com/watch?v=U9Cg1fDn-EI なんだかシュールで笑えます。

*3:それがコレ→https://www.youtube.com/watch?v=yIipfCq611U&feature=youtu.be "For the Metal Headbangers"だそうです。

*4:私はあまりフィアファクをきちんと聴いていないので、彼の持ち味がどれだけ生かされているのかは判断できないんですが...。

*5:これは当時メンバーだったメタル畑のギタリスト、Lee Altusが作曲に関わっているのも大きいと思います。

*6:というか海外のレビューサイトを見るまで、これがカヴァー曲であることすら気付きませんでした。なんかラップやろうとしてるな~とは思ってたんですが...。

*7:この内容、来日公演後に盛り上がっていた私のレザスト・クルート熱を一瞬で冷ますには十分なレベルでした...試聴しただけですけど。

*8:確かFLAの"Millennium"についても同様のことが指摘されていた記憶。

*9:私は流行に疎いのであくまで個人的な印象ですが...。

*10:そしてこのアルバムが、過去にボディとメタルの狭間のようなバンドを大量に擁していたCleopatraからの発売というのも、何かの因果でしょうか。

Fatal Morgana - The Destructive Solution

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Released Year:1990

Record Label:Antler-Subway

 

Track Listing

  1.Overture

  2.The Unchangeable Image

  3.Lifeblood

  4.Earth's Revenge

  5.Herity Caused By The Devil

  6.Glasnost (Original Version)

  7.The Innocent Children Of The Cruel World

  8.Mindcontrol

  9.The Last Generation

10.Greed

11.Attention (Instrumental)

12.Glasnost (Cycle Mix)

 

 オランダ出身のEBMユニットが残した唯一のアルバム。Antler-Subwayからの発売なので、てっきりベルギーの人かと思ってました。

 

 シングル2枚、アルバム1枚だけを残して消えてしまったこともあり、ほとんど知られていないグループですが、個人的にはこれが隠れた名作。どこをどう切り取っても「王道EBM!」としか言い表せないほど原点に忠実なんですが、逆にここまでEBMのマナーに沿った音もなかなか無いと言いますか、ある意味で希少な気がします。

 

 強いて言えば、A Split Secondの酩酊感と、FLAのバキバキなリズムのいいとこ取り、といったところでしょうか。時にヨーロッパ的荘厳さを感じさせる重厚なシンセサイザーの旋律は、ベルジャンEBM/ニュービート由来と思われ、トランス的な覚醒を促します。特にインタールード的な#5,7ではそういった傾向が顕著。A Split Secondを始めとするニュービート勢は、こうした"酩酊感"と引き換えにBPMやビート圧を抑えてどんどんテクノに寄っていくわけですが、このFatal Morganaは逆に、FLAのCaustic Gripを髣髴とさせる威圧的で引き締まったキックを導入、よりハードな路線を志向しています。特に#3での、ガチガチに金属的な横ノリビートは最高。また、#2,4,9,12での扇動的なスピード感も、「再生速度を抑えて重さを引き出した」といわれるニュービートの方向性とまったく逆で興味深いです。だからこそベルギー国内ではあまり受けず、すぐに消えてしまったのではないかという見方も出来ますが...*1

 

 当時の流行からすると中途半端にしか見えなかったであろう、EBMとニュービートの狭間にある作品ですが、時代性とか一切気にしていない私にとっては最高にバランスのいい愛聴盤です。一発屋と切り捨てるにはあまりにもったいなさ過ぎる、捨て曲なしの充実作。例によって入手は困難ですが、「強迫ハンマービート+トランス=最強!」という図式に同意できる人には自信を持ってお勧めします。

 

 Pick Up!:#11「Attention (Instrumental)」

 CDのみのボーナストラックで、同時に出ていた12インチシングルからの収録曲。水の流れるようなSEと流麗なシンセから始まり、ぶっといシンベがせり上がってくるイントロにゾクゾクさせられます。個人的にはJuno Reactorあたりを思い出したり。インストであることも相まって、ベルジャンEBMからトランスが生まれた事がよくわかる名曲。

*1:ベルギー人はドラッグをやらないので、BPMの速いEBMについていけなかった...という話もよく見かけます。