Def.Masterのメンバー変遷

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 オマケ。ツイッターやらネット上に散逸している情報を基に、歴代メンバーの変遷を自分なりに表に起こしてみました。ついでによくwikiで見かけるメンバーのタイムラインも作ってみたり。自分も全然音源を集められてないし、まだまだ不明な点も多いので、もし何かご存じの方いたらコメントでもTwitterでもご教授いただければと思います。「自分が見たライブではこんな編成だったよ!」という情報も大歓迎です。

 

 以下参考。(もしくは遺跡)

mixiのデフマスターコミュ。

mixi.jp

 

② もはや定番といえる例のtogetter。

togetter.com

 

③ まだ有能だった頃の2chのスレ。100も行かず落ちてるくせに情報量がえらい濃密で、ごく初期の2ちゃんねるって凄かったんだなぁ…と思うことしきり*1

music.5ch.net

 

m.o.v.e等の活躍で知られるt-kimura氏も、ごく初期にギターで参加していたそうです。ご本人のツイート↓

 

NARASAKI氏率いるバンド、COALTAR OF THE DEEPERS(COTD)*2のファンサイト。最近存在を知ったのですが、バンドメンバーの来歴、ディスコグラフィ、ライブデータ、掲載誌に至るまで、すべてを網羅的にまとめている凄まじいサイトです。1つのグループについてここまで徹底した調査・データ収集を行い、きちんとした形に仕上げる熱意には頭が下がるばかり*3。もちろんDef.Masterについても記述があり、今回の変遷表を作る際も参考にさせていただきました。特にライブデータを追っていくと、Numb、Swamp Terrorists、Foetusの前座を歴任したデフの凄さがよく判ります。

sites.google.com

 

*1:語れる場所がここしか無かったからというのは判るんですが。

*2:ちなみにYU-MI氏はアルバム「The Visitors From Deepspace」にバックボーカルで、「Cat EP」にエンジニアで参加するなど、COTDとは浅からぬ交流があった模様。

*3:いわゆる"国民的グループ"のファンサイトであっても、ここまでやっている例は少ないかと思います。

Def.Master - Thoughts Distorted

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  日本のインダストリアルメタルバンドの2rdアルバム。今作ではオリジナルメンバーだったEBUが脱退し、基本的にはYU-MI一人のユニットとなっています。その他いくつかの曲では、ギターでNARASAKI(Coalter of the Deepers)と藤田タカシ(Doom)、ベースでHIROKI(Media Youth)、ドラムでSHIGEO(Crawfish)、プログラミング&アシスタントでMURAYA(Trance Noise Machine)…という面々が参加している模様。細かく見ていくと、#1,2,4,6は上記のバンドメンバーで、そのほかの曲はYU-MI氏が1人で録音しているようですね。

 

 前作のジャケは「スリーブ+印刷付き透明フィルムの重ね合わせ」という凝った仕様でしたが、本作のアートワークにおけるメタリック印刷もなかなか気合が入ってます。ご覧の通り、蝶の鱗粉で見られる構造色のような独特の粒子感と、光の当て具合で色味が変化する様子が実にカッコいいですね。*1

 

 高速マシンビートでゴリ押しする曲が目立った前作に比べると、やや音楽性に拡大・深化が見られるのが本作の特徴。特にYU-MI氏の単独製作である#3,5では、テクノ的要素がより前面に出てきており、アンビエント的なシーケンスにゴリゴリのベースと砂嵐ノイズギター、そしていつものデス声が被さるという新境地を見せてくれます。1stの頃からエレクトロニクスの比重は大きかった彼らですが、背景音が明確にテクノっぽくなるだけでここまで印象が変わるのか…と驚かされることしきり。ダンサブルな#3などは、ローゼンクロイツ時代の曲"Once Upon A Time"の進化系ともいえるかもしれません。

 

 その他バンド録音の4曲は前作を踏襲した作りですが、比較的音の分離が良く輪郭がはっきりしていた前作と比べ、音が塊となって飛び込んでくるような印象を受けます。音質が悪くなったというより、細かいノイズやサンプリングがギターリフの間にも綿密に織り込まれることで、全体的に情報量が増えたというか。どうもYU-MI氏のインタビューを読むと、1stの時点でこういう音にしたかったのが、マスタリングの段階でノイズ成分が除去されて不本意な仕上がりになってしまったので、今回はそのリベンジ…ということのようです*2。特に#1は前作の1曲目"Are You In"のリメイク版的な曲で、スピード感はそのまま、ギターレスのガバテクノからヘヴィなリフ主体の構成に変貌。同じサンプリング音を使用していても印象がかなり異なります。

 

 このように着実な変化を示した一方で、全ての障害物をなぎ倒しながら暴走していくような独特の疾走感・初期衝動が減退したのは否めない印象があります。ミッド~スローテンポの曲も、ダンサブルな#3以外はそこまで…という感じもあるのがちょっと残念。ダレ気味の#5については、Ministyの「The Dark Side Of The Spoon」を先取りしたかのような妖しさが垣間見えるのが一周回って興味深いですが。あとは先述の音質の変化についても、パキッとした1stかモコっとした2ndか、この辺り好みが別れそうです。

 

 というわけで、Def.Masterでまず聴くべきアルバムは?と聞かれたら1stを挙げてしまう部分はあるものの、こちらも決して見逃せない内容であることは間違いないでしょう(そもそもアルバムを2枚しか残していないので)。入手性の悪さも相まって語られることの少ない気がするアルバムですが、前作が気に入った方なら聴いて損はないかと。

  

Released Year:1996

Record Label:Destroy Method

 

Track Listing

  1. Risky
  2. Kick Back
  3. Thoughts Distorted
  4. Rage
  5. Tell The Truth
  6. Expose
  7. Expose (V.B.mix)

 

 Pick Up!:#6「Expose」

 不気味なシンセ音が鳴り響くミッドテンポなパートと、ガバ的な直線ビートでゴリ押しする高速パートを行ったり来たりするトリッキーな曲。前作の作風に一番近い曲で、やっぱり彼等にはこのゴリ押し感が似合ってるな~と思ってしまうのはファンとして保守的に過ぎるでしょうか。ちなみに#7は同曲のドラムンベース風リミックスですが、個人的にはオリジナルの方が好きです*3

 

*1:写真に撮るときはえらく難儀しますが。

*2:Doll誌96年11月号より。「エンジニアの色が強く出すぎた。他人に任せるのはもうやめようと思った。」とは本人の弁。

*3:V.B.mixとは本人曰く"Violent Beat mix"の略だそうですが、うーんオリジナルの方がヴァイオレントな気が…。

Rosen Kreuz - Volume Max

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  日本のポジパン・インダストリアルロックバンドの3rdアルバム。一部界隈ではDef.MasterのYU-MIとEBUが在籍していたことで有名でしょうか。特にEBU氏についてはこのアルバムからマニピュレーターとしてクレジットされるようになりました。本作は一応ミニアルバムという扱いのようで、#5,6はボートラ扱いとなっています。この2曲は92年の新宿ロフトでのライブで配布された、400枚限定のシングル*1に収録されていた曲のようです。

 

 1st~2ndでは同時期のミニストリーの影響も感じさせつつ、トランスレコード系なポジティブパンク風味を色濃く残していた彼等ですが、本作では大胆なメタル化が進行しています。強烈なタム回しで幕を開ける#1を始め、全体的にギターの重心が低くなり、音圧と低音域が補強された印象。迫力を増したVo.の咆哮も一体となり、聴き手をねじ伏せていくかのような音作りは、まさに"デフマスター前夜"の様相を呈しております。1stアルバム収録曲を再録した#6をオリジナルと比べれば、その変化は一目瞭然でしょう*2

 

  一方、初期に見られた耽美な雰囲気や実験的な側面、つまりポジパン要素はやや後退気味。また、ドラマー不在で初めから打ち込み主体の曲構造をとっているDef.Masterとは違い、こちらはあくまでもバンドサウンドが主体ですので、ギターノイズが前に出た分、打ち込みが目立ちにくくなっている節はあります。そのため、全体的な冷徹さ、インダストリアル感という意味では物足りないという人もいるかもしれません。とはいえ#4のように、清涼な浮遊感を感じさせるアンビエントハウス調の曲もサラッとこなしてしまう辺り、メタル一辺倒に留まらないセンスを感じます。激しい曲が続く中で、この曲はアルバム中の良いアクセントになっていますね。

 

 全6曲・22分というコンパクトさゆえのボリューム不足は否めませんが、デフマスターのファンなら押さえて損はないアルバムでしょう。高騰しがちな2ndに比べると、1stとこの3rdは比較的安く出回っているようですので、気になった方は是非。

  

Released Year:1993

Record Label:Zazzle Records

 

Track Listing

  1. Metal Duck
  2. The Spider
  3. So What!
  4. Once Upon A Time
  5. Madman's Revenge
  6. Decay The Body

 

 Pick Up!:#2「The Spider」

 本作の中ではエレクトロニクスの活躍が目立つインダストリアルメタルな1曲。シーケンス的な電子音とガチャガチャしたメタルパーカッションが、猪突猛進なリフの性急さに拍車をかけていてグッドです。

*1:こんな感じのミニCDだった模様。→Rosen Kreuz – The Crack Edge Monsters (1992, CD) - Discogs

*2:個人的には、マシーナリーなエレクトロノイズが前に出たオリジナルも捨てがたい魅力がありますが。

Test Dept. - Atonal & Hamburg "Live"

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 英国が誇る鬼パーカッション軍団、Test Dept.のライブ盤。全て1985年の録音で、前半4曲がドイツの音楽フェス『Berlin Atonal』*1出演時の録音、後半3曲がハンブルグでのライブの録音です。リリースは(エンヤ化する前の)初期DeleriumやControlled Bleeding、Chromeなどを出していた、Dossierというドイツのレーベルから*2

 

 80年代の彼らのライブ音源には、本作以外にもう1つ「Ecstacy Under Duress」というアルバムが存在しますが、あちらは82~83年の録音ということで「Beating The Retreat」からの曲が中心。したがって、彼らの代表作であり最もテンションが高かった「The Unacceptable Face Of Freedom」前後の公式ライブ音源はこれが唯一です。そういう意味でマニアにとっては見逃せないアイテム。

 

 中身はまさに、全盛期のTest Dept.の迫力を見事に切り取った内容となっています。やはりこの人たちの音楽性はライブの方が映えるというか、演者のボルテージが高まるようですね。特に後半3曲の迫力は、スタジオ音源を遥かに凌駕していますし、全7曲・40分とコンパクトなのも個人的によし。こういう音楽性で延々70分とか聴かされてもこっちが疲れてしまうので…(オイ)。選曲の面でも、自主製作カセット*3から2曲、「Beating The Retreat」から3曲、「The Unacceptable Face Of Freedom」から2曲とバランスが取れています(欲を言えば、これに"Compulsion"が加わっていれば完璧だった…)。

 

 レーベルがどマイナーなせいで入手はやや難しいですが、探す価値のある内容だと思います。意外とTest Dept.入門にいいかも(?)。オススメです。

 

Released Year:1992

Record Label:Dossier

 

Track Listing

  1. The Fall From Light
  2. Total State Machine
  3. Shockwork
  4. Gdansk
  5. Kick To Kill
  6. Fist
  7. 51st State Of America
 

 Pick Up!:#7「51st State Of America」

 自国(英国)を指して「ここはアメリカの51番目の州だ」と歌に乗せて皮肉ったのはThe Theのマットジョンソン*4でしたが、こちらはもう皮肉どころか徹頭徹尾マジギレしております。このパーカッション乱れ打ちは、血管切れるどころか掌の皮とか心配になるレベル。コラコラ、お決まりの皮肉のセンスはどこへ行っちまったんだいジョンブル(英国人)…というツッコミはまぁさておき。

*1:近年も開催されている息の長いフェスのようです。今は完全にテクノ系イベントと化しているようですが。Berlin Atonal〜原点に回帰し、未来を憂うベルリン・サウンドの本懐〜 – FLOOR

*2:変わりダネだと、へなちょこゴシックパンクだった頃のマイブラの1stをCDでリイシューしたのもここだったり。

*3:あまり知られていませんが、初期にこういうのを出してたりします→Test Dept. – History (The Strength Of Metal In Motion) (1982, Cassette) - Discogs

*4:The Theの"Heartland"という曲を参照の事。→https://www.youtube.com/watch?v=fPSO8pdAX6c

Die Krupps - Metalmorphosis Of Die Krupps '81-'92

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 タイトルの通り、クルップスのデビューから「I」までの音源をまとめたコンピレーション盤。発売は96年と既にインダストリアルメタル化が進行していた時期ですが、「Ⅱ」以降の音源はスルーされており、どちらかと言えばEBM路線の時期に焦点を絞った内容です。

 

 彼らの初期音源といえば、MuteのサブレーベルGrey Areaから出ていた「Metall Maschinen Musik: 91-81 Past Forward」がよく知られていますが、今回取り上げるこのコンピはまさにその上位互換…と言うにはちょっと弱いかなぁというのが正直なところ。

 

 #1、5など、「I」からのシングル盤でしか聴けないリミックスの収録は有難いし、#2、6といったコンピレーション盤への提供曲といった目玉もある一方で、#3、4のようにオリジナルアルバムの曲をそのまま入れていたりと、レアトラック集にしたいのか初心者向けベストにしたいのか、焦点がブレている印象。#7、8は「Past Forward」収録版とは別バージョンを入れる気配り(?)を見せる一方で、#9以降の曲目がほとんど「Past Forward」と同じというのもちょっと残念です。特に"Stahlwerksinfonie"はどうせなら(A)ではなく(B)を入れて欲しかったところ。まぁ仕事の雑さに定評のあるクレオパトラのリリースなので仕方ない所でしょう。

 

 とはいえクルップスのシングル盤など国内ではそうそう見かけないので、一応それなりの史料価値はあるんですよね。特に#5はオリジナルに比べてメタパーもギターも厚みが増した、全体的に派手なミックスで原曲よりも好きだったり。逆に#7はなんか音が控え目であんまし面白くなかったりするんですけども。いずれにせよ、これ1枚あれば「Past Forward」は要らないかというとそんなことはなく、むしろアルバム全体のバランスやまとまりはあちらの方が優れているので、入手性を考えても初心者はそちらを買った方がよいかと思われます。このアルバム自体も出回った数が少ないせいか微妙に入手困難ですし。マニア向けのアイテムですね。

  

Released Year:1996

Record Label:Cleopatra

 

Track Listing

  1. Metal Machine Music (The Aggressor)
  2. The Dawning Of Doom (Remix)
  3. High Tech/Low Life
  4. Disciples Of Discipline
  5. The Power (Metal-Hardfloor Remix)
  6. Isolation
  7. Germaniac (Walhalla Version)
  8. The Machineries Of Joy (Radio Version)
  9. Risk (Operatic Intro)
10. Gladiators (Demo Version)
11. Risk (Metallic Outro)
12. Neue Helden
13. Tod & Teufel
14. Wahre Arbeit Wahrer Lohn
15. Stahlwerksinfonie (A)

 

 Pick Up!:#6「Isolation」

 ラフトレードのコンピ盤に提供した、Joy Divisionのカバー曲。「Ⅲ」に同名のシングル曲がありますが、あちらはクルップスのオリジナル曲で全くの別物というのが紛らわしい…。メタリカのカバーアルバムでは原曲を大胆にEBM化し度肝を抜いた彼等ですが、今回はわりとオリジナルに忠実。ボディビートやジェットエンジン音のサンプリングを駆使して音の厚みは強化しつつも、原曲の冷たさや無機質さをキープした仕上がりです。当然ながらメタルギターは皆無。DESSAUによるカバー版と比べてみるのもまた一興でしょう。

Blue Eyed Christ - Leaders + Followers

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 ロサンゼルス出身のEBM/インダストリアルロックユニットの1stアルバム。90年代に残したのはこの1作だけでそれきりかと思いきや、2000年以降もちらほらとアルバムを出しており、2020年にも新作をリリースしている貴重な現役組です。中の人はThrill Kill KultのGroovie MannとTrash Deityというユニットをやっていたり、最新作ではKMFDMのEn Eschをゲストに招いたりと、「そっち方面」とも交流がある様子。

 

 本作はベルギーのEBM系レーベルであるKK Recordsからのリリースということで、US出身ながら同時期の米国のEBMグループとはやや違う雰囲気があります。重量感のあるマシンビートや線の細いディストーションギターの使い方はRevolting Cocksのそれなんですが、そこに乗っかるウワモノのシンセはひんやりとした冷たい質感で、Front 242やA Split Secondのようなベルジャンニュービートを連想したり。そしてVo.はTKKを思わせるキンキン声というなかなか面白い取り合わせです。アメリカンなEBMとヨーロピアンなEBMの良いとこどり、みたいな。

 

 全体的にB級な垢抜けなさはあるものの、各曲のクオリティは粒揃いです。曲ごとのカラー付けも、性急で直線的なボディの#2、高圧的なメタパーを配置した#7、スリリングなシンセベースとクワイアの使い方がダンジョンBGMっぽい#8等なかなか多彩で、アルバムを通じて一本調子にならないよう工夫されています。如何せん所属レーベルがマイナーだったせいで日の目を見ていない*1感じですが、仮にWax Trax!から出ていればもう少し名を残せたんじゃないかという気も。Revolting CocksやTKKが好きな人は一聴の価値あり!な内容です。

 

Released Year:1991

Record Label:KK Records

 

Track Listing

  1. Intro
  2. Surrender
  3. Angesls
  4. Crucifixion
  5. Catch My Fall
  6. Addicitive
  7. I'm Falling
  8. Land Of Hypocrisy
  9. Spiritualism
10. Angels (Reprise)

 

Pick Up!:#5「Catch My Fall」

 横ノリの重厚なビートが気持ちいいシングル曲。終始ミッドテンポながら、本作の中では最もキャッチーな曲かも。特に、サビで出現するオーロラのようなシンセサイザーの使い方が堪りません。「Catch my fall, Save us all」という歌詞にも、どこか初期NIN的・欧州的な繊細さ(情けなさともいう)と哀愁があって、米国産EBMのマッチョさとは一線を画していますね。つくづくアメリカ出身らしくなくて面白いユニットだなと。

*1:あとは購買意欲を削がれるこのダサジャケも要因の1つかな…。

Lead Into Gold - Chicks & Speed: Futurism

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 ミニストリーは80年代後半に多数のサイドプロジェクトで作品を残していますが、このLead Into Goldは珍しくPaul Barkerが主導のユニット。本作は彼らの初期シングル2枚をコンパイルしたEPです。

 

 各シングルのA面曲である#1や#4は古き良きEBMといった感じで素晴らしいのですが、それ以外の曲は正直それほど…といった感じでしょうか。どの曲もドラムサウンドミニストリー的なズシズシ来る重厚感があって悪くないんですけれど。今は亡き某EBMサイトでは『LAIBACHを思わせる荘厳さという方向性があるのに、PAUL BARKERが昔いたグループの曲の焼き直しが妙な形で差し込まれていて×』と腐されておりました。このユニットではVo.もポールが担当しているのですが、ダミ声でもウゲウゲ声でもない独特の甲高い声質(単に歌が下手とも言う)なので、そこも好みが別れそう。

 

 ちなみに上記の"昔いたグループ"というのは、ポールがミニストリー加入前にやっていたThe Blackoutsというバンドのこと。彼らのシングル「Lost Soul's Club」をAl Jourgensenがプロデュースしたのがきっかけで、アル×ポールの黄金タッグが誕生したようです。さらに言えば、The BlackoutsのVo.以外のメンバー3人は、バンド解散後にそのまま「Twitch」発表後のミニストリーのツアー*1に帯同しています。この3人というのが、Paul Barkerにその弟のRoland Barker、そしてドラマーのWilliam Rieflinだったという…。つまりThe Blackoutsは、その後のミニストリーやリヴコの母体となったグループでもあるわけですね。

 

 完全に余談ですが、楽曲自体の演奏には何も関与していないにも関わらず、#1のPVにはMartin AtkinsとTrent Reznor(!)が出演していることでも知られています(チラッと映る程度ですが)。 詳細は不明ですが、トレントさんのヘアスタイルと時期的に、PV撮りの際に隣で"Head Like A Hole"のPVを撮影していたので、アルさんたちが隙を見て引っ張り込んだのでは…と噂されているようです*2

 

Released Year:1990

Record Label:Wax Trax!

 

Track Listing

  1. Faster Than Light
  2. The Stripper
  3. Beauty
  4. Idiot
  5. Blackened Heart
  6. Hatred

 

 Pick Up!:#4「Idiot」

 スローテンポな曲が大半な中、際立ってノリノリなデビューシングル。弾けるようなエレクトロニック・ジャンク・ビートと、躍動するデケデケベースライン*3が気持ちいいこと気持ちいいこと。本家ミニストリーやリブコでもあまり見られなかった、どストレートの直線的なボディは必聴です。この曲だけは作曲でアルさんがクレジットされているのを確認して、なるほどまた鬼才の仕業ね…と納得したのでした。

*1:このツアーの模様は「Toronto 1986」というライブアルバムに収録されています。→https://ministryband.bandcamp.com/album/toronto-1986

*2:確かに、Martin Atkinsも"Head Like A Hole"のPVに出演していますからね。

*3:ソフバの"Virtual War"のベースラインの元ネタではないかという説もあったり。