日本のポジパン・インダストリアルロックバンドの3rdアルバム。一部界隈ではDef.MasterのYU-MIとEBUが在籍していたことで有名でしょうか。特にEBU氏についてはこのアルバムからマニピュレーターとしてクレジットされるようになりました。本作は一応ミニアルバムという扱いのようで、#5,6はボートラ扱いとなっています。この2曲は92年の新宿ロフトでのライブで配布された、400枚限定のシングル*1に収録されていた曲のようです。
1st~2ndでは同時期のミニストリーの影響も感じさせつつ、トランスレコード系なポジティブパンク風味を色濃く残していた彼等ですが、本作では大胆なメタル化が進行しています。強烈なタム回しで幕を開ける#1を始め、全体的にギターの重心が低くなり、音圧と低音域が補強された印象。迫力を増したVo.の咆哮も一体となり、聴き手をねじ伏せていくかのような音作りは、まさに"デフマスター前夜"の様相を呈しております。1stアルバム収録曲を再録した#6をオリジナルと比べれば、その変化は一目瞭然でしょう*2。
一方、初期に見られた耽美な雰囲気や実験的な側面、つまりポジパン要素はやや後退気味。また、ドラマー不在で初めから打ち込み主体の曲構造をとっているDef.Masterとは違い、こちらはあくまでもバンドサウンドが主体ですので、ギターノイズが前に出た分、打ち込みが目立ちにくくなっている節はあります。そのため、全体的な冷徹さ、インダストリアル感という意味では物足りないという人もいるかもしれません。とはいえ#4のように、清涼な浮遊感を感じさせるアンビエントハウス調の曲もサラッとこなしてしまう辺り、メタル一辺倒に留まらないセンスを感じます。激しい曲が続く中で、この曲はアルバム中の良いアクセントになっていますね。
全6曲・22分というコンパクトさゆえのボリューム不足は否めませんが、デフマスターのファンなら押さえて損はないアルバムでしょう。高騰しがちな2ndに比べると、1stとこの3rdは比較的安く出回っているようですので、気になった方は是非。
Released Year:1993
Record Label:Zazzle Records
Track Listing
1. Metal Duck
2. The Spider
3. So What!
4. Once Upon A Time
5. Madman's Revenge
6. Decay The Body
Pick Up!:#2「The Spider」
本作の中ではエレクトロニクスの活躍が目立つインダストリアルメタルな1曲。シーケンス的な電子音とガチャガチャしたメタルパーカッションが、猪突猛進なリフの性急さに拍車をかけていてグッドです。
*1:こんな感じのミニCDだった模様。→Rosen Kreuz – The Crack Edge Monsters (1992, CD) - Discogs
*2:個人的には、マシーナリーなエレクトロノイズが前に出たオリジナルも捨てがたい魅力がありますが。