Lead Into Gold - Chicks & Speed: Futurism

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 ミニストリーは80年代後半に多数のサイドプロジェクトで作品を残していますが、このLead Into Goldは珍しくPaul Barkerが主導のユニット。本作は彼らの初期シングル2枚をコンパイルしたEPです。

 

 各シングルのA面曲である#1や#4は古き良きEBMといった感じで素晴らしいのですが、それ以外の曲は正直それほど…といった感じでしょうか。どの曲もドラムサウンドミニストリー的なズシズシ来る重厚感があって悪くないんですけれど。今は亡き某EBMサイトでは『LAIBACHを思わせる荘厳さという方向性があるのに、PAUL BARKERが昔いたグループの曲の焼き直しが妙な形で差し込まれていて×』と腐されておりました。このユニットではVo.もポールが担当しているのですが、ダミ声でもウゲウゲ声でもない独特の甲高い声質(単に歌が下手とも言う)なので、そこも好みが別れそう。

 

 ちなみに上記の"昔いたグループ"というのは、ポールがミニストリー加入前にやっていたThe Blackoutsというバンドのこと。彼らのシングル「Lost Soul's Club」をAl Jourgensenがプロデュースしたのがきっかけで、アル×ポールの黄金タッグが誕生したようです。さらに言えば、The BlackoutsのVo.以外のメンバー3人は、バンド解散後にそのまま「Twitch」発表後のミニストリーのツアー*1に帯同しています。この3人というのが、Paul Barkerにその弟のRoland Barker、そしてドラマーのWilliam Rieflinだったという…。つまりThe Blackoutsは、その後のミニストリーやリヴコの母体となったグループでもあるわけですね。

 

 完全に余談ですが、楽曲自体の演奏には何も関与していないにも関わらず、#1のPVにはMartin AtkinsとTrent Reznor(!)が出演していることでも知られています(チラッと映る程度ですが)。 詳細は不明ですが、トレントさんのヘアスタイルと時期的に、PV撮りの際に隣で"Head Like A Hole"のPVを撮影していたので、アルさんたちが隙を見て引っ張り込んだのでは…と噂されているようです*2

 

Released Year:1990

Record Label:Wax Trax!

 

Track Listing

  1. Faster Than Light
  2. The Stripper
  3. Beauty
  4. Idiot
  5. Blackened Heart
  6. Hatred

 

 Pick Up!:#4「Idiot」

 スローテンポな曲が大半な中、際立ってノリノリなデビューシングル。弾けるようなエレクトロニック・ジャンク・ビートと、躍動するデケデケベースライン*3が気持ちいいこと気持ちいいこと。本家ミニストリーやリブコでもあまり見られなかった、どストレートの直線的なボディは必聴です。この曲だけは作曲でアルさんがクレジットされているのを確認して、なるほどまた鬼才の仕業ね…と納得したのでした。

*1:このツアーの模様は「Toronto 1986」というライブアルバムに収録されています。→https://ministryband.bandcamp.com/album/toronto-1986

*2:確かに、Martin Atkinsも"Head Like A Hole"のPVに出演していますからね。

*3:ソフバの"Virtual War"のベースラインの元ネタではないかという説もあったり。