Fatal Morgana - The Destructive Solution

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Released Year:1990

Record Label:Antler-Subway

 

Track Listing

  1.Overture

  2.The Unchangeable Image

  3.Lifeblood

  4.Earth's Revenge

  5.Herity Caused By The Devil

  6.Glasnost (Original Version)

  7.The Innocent Children Of The Cruel World

  8.Mindcontrol

  9.The Last Generation

10.Greed

11.Attention (Instrumental)

12.Glasnost (Cycle Mix)

 

 オランダ出身のEBMユニットが残した唯一のアルバム。Antler-Subwayからの発売なので、てっきりベルギーの人かと思ってました。

 

 シングル2枚、アルバム1枚だけを残して消えてしまったこともあり、ほとんど知られていないグループですが、個人的にはこれが隠れた名作。どこをどう切り取っても「王道EBM!」としか言い表せないほど原点に忠実なんですが、逆にここまでEBMのマナーに沿った音もなかなか無いと言いますか、ある意味で希少な気がします。

 

 強いて言えば、A Split Secondの酩酊感と、FLAのバキバキなリズムのいいとこ取り、といったところでしょうか。時にヨーロッパ的荘厳さを感じさせる重厚なシンセサイザーの旋律は、ベルジャンEBM/ニュービート由来と思われ、トランス的な覚醒を促します。特にインタールード的な#5,7ではそういった傾向が顕著。A Split Secondを始めとするニュービート勢は、こうした"酩酊感"と引き換えにBPMやビート圧を抑えてどんどんテクノに寄っていくわけですが、このFatal Morganaは逆に、FLAのCaustic Gripを髣髴とさせる威圧的で引き締まったキックを導入、よりハードな路線を志向しています。特に#3での、ガチガチに金属的な横ノリビートは最高。また、#2,4,9,12での扇動的なスピード感も、「再生速度を抑えて重さを引き出した」といわれるニュービートの方向性とまったく逆で興味深いです。だからこそベルギー国内ではあまり受けず、すぐに消えてしまったのではないかという見方も出来ますが...*1

 

 当時の流行からすると中途半端にしか見えなかったであろう、EBMとニュービートの狭間にある作品ですが、時代性とか一切気にしていない私にとっては最高にバランスのいい愛聴盤です。一発屋と切り捨てるにはあまりにもったいなさ過ぎる、捨て曲なしの充実作。例によって入手は困難ですが、「強迫ハンマービート+トランス=最強!」という図式に同意できる人には自信を持ってお勧めします。

 

*2020.8.19追記

 なんと30周年を記念して(?)、「The Final Destruction」としてMecanicaというポーランドのレーベルから再発されたようです。本作の音源と、アルバム未収録のシングル音源等をコンパイルしており、彼らの残した音源は余さず網羅できる親切設計。もちろんリマスター済です。Bandcampからも購入できる*2ので、とりあえず試聴だけでもいかがです?

 

 Pick Up!:#11「Attention (Instrumental)」

 CDのみのボーナストラックで、同時に出ていた12インチシングルからの収録曲。水の流れるようなSEと流麗なシンセから始まり、ぶっといシンベがせり上がってくるイントロにゾクゾクさせられます。個人的にはJuno Reactorあたりを思い出したり。インストであることも相まって、ベルジャンEBMからトランスが生まれた事がよくわかる名曲。

*1:ベルギー人はドラッグをやらないので、BPMの速いEBMについていけなかった...という話もよく見かけます。

*2:こちら→The Final Destruction | Fatal Morgana | mecanica