Skinny Puppy - 12 Inch Anthology
Released Year:1990
Record Label:Nettwerk
Track Listing
1.Dig It
2.The Choke (Re-Grip)
3.Addiction (First Dose)
4.Deep Down Trauma Hounds (Remix)
5.Serpents
6.Chainsaw
7.Assimilate (R23 Remix)
8.Stairs And Flowers (Def Wish Mix)
9.Stairs And Flowers (Too Far Gone)
10.Testure (12" Version)
タイトル通り、彼らの初期シングルの音源を纏めたコンピレーションアルバム。内訳を時代順に示しますと、#1,2が"Dig It"、#6~9が"Chainsaw/Stairs And Flowers"、#3,4が"Addiction"、#5,10が"Testure"からの収録となっています。各シングルからは収録時間の関係でいくつかオミットされている音源もありますが、それらは別のコンピレーションやオリジナルアルバムのボートラで聴くことが可能です*1。
まず個人的に注目したいのは#2,7の2曲。どちらもシングルのB面だった1stアルバム収録曲のリミックスですが、オリジナルを大きく上回る完成度。アレンジの大幅な変更はないものの、ヴォーカルの迫力やバックトラックの分厚さが向上し、やや控えめだった原曲の線の細さが改善されています。特に#7は、終盤での"Dead!"連呼が素晴らしくカッコいい。
シングル"Addiction"からの2曲では、リミキサー/エンジニアリングにAdrian Sherwoodが参加しており、ダブ解釈されたパピーの音を聞くことができます。後の"Testure"に通じる哀愁を漂わせる#3は、"Mind~"に収録された"Addiction (Second Dose)"と聞き比べるのもまた一興。First Doseがメタルパーカッションやキラキラシンセを強調した、ある種パピーらしいシャープな音であるのに対し、Second DoseはOn-Uらしいモッサリとした、Tackhead的な音となっています。わりと大人しめな仕上がりなので、個人的にはもっとズタズタにしちゃっても良かった気はしますが...。
#4は原曲の強迫的なドラムを抑え、飛び交うノイズやたまに顔を出すメロディアスなフレーズなど、曲に仕込まれた各種ギミックがより捉えやすい仕上がり。3rdアルバム自体、全体的に古典ホラー映画チックな印象が強かったですが、この曲はそのカラーを最も突き詰めた仕上がりと言えるかも。ちなみに、"Mind~"収録版ではアウトロに映画だかテレビショーのサンプリングが挿入されていましたが、こちらのコンピではなぜかカットされています。
一方で、"Stairs And Flowers"のリミックスは正直退屈。新たに加えられたシンセベースのフレーズは嫌いじゃないですが、派手なノイズや強力なビートも無く、ヴォーカルも時々呻いたりするだけなのでフックに乏しいです。大して差異がないバージョン違いが2曲連続するのも、余計退屈さに拍車をかけているような。文字通りチェーンソーの音をサンプリングした#6も、2ndアルバムと3rdアルバムの過渡期のような雰囲気の曲ではありますが、ちょっと地味かも。
そんな感じで捨て曲なし!とまでは言いませんが、シングル以外ではここでしか聴けない曲(#3,8,10)もあり、また内容としても初期ベスト的なものになっているので、ファンとしてはそれなりに見逃せないものと言えるでしょう。個人的には、中期から遡って聴く場合、下手にオリジナルアルバムに手を出すよりも、まずこれから聴いた方が良いんじゃないかと思っていたり。
Pick Up!:#10「Testure (12" Version)」
アルバム収録版は哀愁シンセを前面に押し出したポップ(?)な仕上がりでしたが、こちらのリミックスでは分厚いビートを追加したボディな曲に変貌。この超かっこいいイントロは、Soft Balletの藤井氏が"Spindle"でパクったことでも有名です。さらに全編にわたって生ベースが挿入されており、特に間奏部からの盛り上げに大きく貢献している印象。この手法は後に"Nature's Revenge"でも取り入れられていますね。
*1:特に、同時期のシングル曲をボートラに加えていた"Mind: The Perpetual Intercourse"とは4曲が被るという事態に...。