Die Krupps - The Final Remixes

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Released Year:1994

Record Label:Our Choice

 

Track Listing

  1.To The Hilt (Erlend Ottem & Jocke Skog Of Clawfinger Remix)

  2.Paradise Of Sin (Luc Van Acker Of Revolting Cocks Remix)

  3.Language Of Reality (Charlie Clouser & Mick Cripps Remix)

  4.Fatherland (Andrew Eldritch Of The Sisters Of Mercy & Rodney Orpheus Of The Cassandra Complex Remix)

  5.Worst Case Scenario (White Child Rix Of Gunshot Remix)

  6.Shellshocked (Aaron Aedy Of Paradise Lost Remix).

  7.Crossfire (Jim Martin Remix)

  8.Bloodsuckers (Phillip Boa & M. D. Moses Remix)

  9.Iron Man (Sascha Of KMFDM & Chris Shepard Remix)

10.Inside Out (Jeff Walker Of Carcass Remix)

11.New Temptation (F.M. Einheit Of Einstürzende Neubauten Remix)

12.Hi Tech Low Life (Julian Beeston & Del Tagg Remix)

13.The Dawning Of Doom (Waltari Remix)

14.Ministry Of Fear (Xanu & The Skin Of N-Factor Remix)

15.Metal Machine Music (Rodney Orpheus Of The Cassandra Complex Remix)

16.Rings Of Steel (Pro-Pain & Steve Remote Remix)

 

 ドイツのインダストリアル・EBMバンドのリミックス・アルバム。タイトル通り「II - The Final Option 」のリミックス集かと思いきや、1つ前のアルバム「I」からのリミックスも4曲入っているお得(?)な仕様です。なお、このアルバムの米国盤として、収録曲の一部に「II」の原曲、およびシングル収録のリミックス曲を加えた「Rings Of Steel」という編集盤がCleopatraから出ていますが、かなり中途半端な内容なので、こっちを買うことをお勧めします。流石は仕事の雑さ加減に定評のあるCleopatra...*1

 

 それまでもシングル等ではリミックスを多数収録してきた彼らですが、ここに集められたリミキサー陣は従来のそれと比べてもかなり豪華。やっぱり「II」がそれだけ売れたのか...とつい邪推をしてしまいます。「アルバムの後にリミックス盤を出す」という文化を浸透させたのはNINだと思いますが、NINの場合は身内を使うか、或いはCoilやFoetusといった先達に任せることが多かったのに対し、クルップスのこのアルバムでは同世代もしくは後輩グループが集結しており、図らずもトリビュートアルバムの様相を呈しているのがおもしろいところです。実際、リミックスと称する事実上のカヴァーを披露するグループも混じってたり...。彼らもこの時点で(空白期間があったとはいえ)既に活動歴10年超えのベテランですからね。

 

 さて、いくら豪華な面子を揃えても外れのときは全然ダメ...ということも多々あるリミックスアルバムですが、今回取り上げるこのアルバムに関しては成功と言えるのでは。メタリックなリフを前面に押し出した#1,7や、スピード感を維持したボディ路線の#2,9など方向性は様々ですが、どの曲もきちんとアナザーサイドを見せつつも、原曲が持っていた旨みはしっかり残されており好感が持てます。良い意味でオリジナルを重視した構成は"破壊"や"再構築"というワードとは無縁ですが、その分原曲が好きな面々でも安心して聴くことができる仕上がり。下手に奇をてらって180°視点を変えるぐらいなら、60°ぐらいの方がいい場合もあるという好例ではないでしょうか(謎の例え)。

 

 そんな中で異彩を放っているのが#11。金属音とノイズ塗れでやや実験的な曲調は、Jürgenのヴォーカルが無ければほぼノイバウテンと言っても過言でないレベルです。ある意味、「鉄鋼交響曲」を奏でていた最初期のクルップスに回帰したとも取れますけど。当時のノイバウテンと言えば"脱インダストリアル"な路線を強めていた頃ですが、やっぱりF.M. Einheitはこういう音を追求したかったんだろうなぁ...と思うことしきり*2

 

  さらにFaith No MoreのJim MartinやThe Sisters Of MercyのAndrew Eldritch*3など、ロック畑の人...もとい「この人リミックスとかやるんだ!?」という名前があったりするのも興味深いです。でも仕上がりはどちらの曲もお気に入り。特に後者はオリエンタルなコーラスとシンセによって、元々あった演歌っぽい"哀愁"というか"泣き"の要素が強化されてます。良い仕事してますね。

 

 あと#3は、まだNINに加入しているか微妙な頃合のCharlie Clouser*4が手がけています(なので"Charlie Clouser Of NIN"とはクレジットされてません)。後にインダストリアル・ロックシーンを支える敏腕リミキサー/プロデューサーとして名を馳せる彼の、ごく初期の仕事という意味では注目かも。まぁ、気持ち悪いヴォーカルの歪ませ方やDJっぽいブレイクの挟み方など、作風はこの頃から全然変わってないんですが。

 

 そんなこんなで、オリジナルの「II」が気に入ったなら併せて聴くべき良作。「II」と抱き合わせになった2枚組も存在するようですので、新規の方はそちらを購入したほうがお得かもしれません*5。いずれにせよお勧め。

 

 Pick Up!:#15「Metal Machine Music (Rodney Orpheus Of The Cassandra Complex Remix)」

 「I」からシングルカットされた彼らの代表曲を、ベルギーのポジパンEBMバンド The Cassandra Complexがリミックス。ベルジャン・ニュービートな音かと思いきや、これがギター5割増し、メタパー8割増しでビックリ。ピコピコ度が増したシンセベースの上にバキバキのメタパーが散りばめられ、要所要所で音圧の上がったメタルギターが自己主張する、非常にメリハリの効いた構成となっています。それでいてただのインダストリアルメタルにならず、あくまで「ボディ」を維持しているのはEBM出身ゆえの拘り...かは判りませんが、個人的に最高のバランス感覚。この曲は数多のバージョン違いが存在しますが、その中でもベストに近い完成度と言えるのでは。

*1:でも日本盤が出たのは「Rings Of Steel」の方という...。

*2:彼はその後、1997年にノイバウテンを脱退しています。

*3:こちらに関してはThe Cassandra Complexの人との共同作業なので、「ゴスの帝王」がどの程度貢献しているのか微妙なところですが...。

*4:この人が正式にNINに参加するのはSelf Destruct Tourの後半(12月末、wikiより→https://en.wikipedia.org/wiki/Self_Destruct_Tour#Band_line-up)からなのですが、それ以前からプログラミングやエンジニアリングでNINには関わっていた模様。どうもこの頃はBurning Retnaというバンドにドラマーとして参加してたらしいです(Twitterのフォロワーさん情報。ありがとうございます)。詳細は→http://www.theninhotline.net/archives/articles/xint2a.shtmlのインタビューで。

*5:ただし、そちらの方は"The Final Option Remixed"と題されていて、「I」収録曲のリミックスは入ってないみたいです。ruchi様より情報提供いただきました。ありがとうございます。