インダストリアル音楽大好き男に「どんなアーティストが好き?」と訊ねられたとき、女はどう答えたらいいの?

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あ、まず前提として、
貴女がインダストリアル大好き男を夢中にさせることが、
はたして貴女を幸福にするかどうか、それはまた別問題だけれど。
とはいえ、インダス音楽大好き男たちは玉石混交ながら、
IT系の超かしこい男なども多く、
したがって、釣り師たる女たちにとっては、
なかなかあなどれない釣り場です。


では、そのテの男に「どんなアーティストが好き?」と訊ねられたとき、
貴女は、どう答えれば理想的でしょう?
まず最初に、その男がNitzer EbbのようなタイプのEBM
あとはDAF、そして(シュターロフォンを自作するほどではないけれど)
メタルパーカッションが大好きな、そんなタイプの場合は、
貴女はかれの目を見て、微笑みとともに質問など無視して、こう言いましょう、
「わたしが、一緒に筋トレしてあげる♪」
これこそまさに必殺の答えです。
そこでインダス/EBM大好き男が、えへへ、とやにさがったならば、
貴女は、合言葉として、「おれの体の筋肉は、どれをとっても機械だぜ」
あたりをひそかに押さえておきましょう。これで成功まちがいなしです。


しかし、ここでは、もう少しハイブロウな(?)本格インダス音楽好きの男の
落とし方をお伝えしましょう。
この場合、貴女は、こう答えましょう、
「わたしは、スキニー・パピーが好き。
寝る前とかに聴くの、Nivek Ogreの死神ボイスはいつもカッコいいし、
cEvin Key率いるサイドプロジェクトも、大好き♪」
もしも貴女がそう答えたならば、
その瞬間、インダス大好き男の目はきらりと輝き、
かれの貴女への恋心は、
20%増量になるでしょう。


なぜって、スキニー・パピーは、
じめじめした地下室を思わせるアングラな世界観で、
ステージは常に血みどろで、メロディは暗いながらも、
そこがまたちょっぴりヨーロッパのゴシックなふんいきをかもしだしていて。
しかもcEvin Keyの生み出す狂気のサウンドスケープは、
初期インダストリアル・ノイズの実験精神を、質高く継承していて、
なおかつ、後続のインダス系グループに多大な影響を与えた功績もあって。
したがってスキニー・パピーこそは、
本来なんの接点もないまったく縁もゆかりもない別々の世界に生きている、
黒服のゴスロリバンギャと、玉もあればキ○ガイも混じっている、
そんなノイズ大好き男たちが、
この世界で唯一(いいえ、系列ユニットLeæther Strip、:wumpscut:と並んで唯三)遭遇しうる場所です。



では、参考までに、危険な回答を挙げておきましょう。
インダス音楽大好き男に「どんなアーティストが好き?」と訊ねられたとき、
貴女がこう答えたとしましょう、
マリリン・マンソンが好き♪ 週3回は、YouTubeでPVを見るの。」
その瞬間、インダス大好き男の貴女への恋心は消えます、
なるほどマリリン・マンソンは、人気のインダストリアル系ロックバンド、
曲自体は平凡ながら、ま、無難にまとめてあるものの、
しかし、「人々が信じる神はクソ食らえ!」とかなんとか無意味な自説を吹聴し、
インダストリアルというジャンルについての謬見を撒き散らした罪がありますから、インダス大好き男にとっては天敵なんです。
また、もしも貴女が「ミニストリーが大好き♪ あたしこの間出た新作も買ったよ♪」と答えたとしても、同様の効果をもたらすでしょう、
なぜって、ミニストリーは、1980年代には世界屈指のインダストリアルバンドだったものの、
しかし1990年代半ばから、いやはやなんともなメタルバンドに転落し、
いまや、あのジャンルでは、Celldwellerの魅力に遥かに及びません。


またもしもたとえあなたがインダス音楽が大好きで、
「わたし、スロッビング・グリスルが好き、スタジオアルバムも良いけど、
最高に好きなのはライブ音源♪ 即興演奏のスタジオライブも、自主レーベルから出してたカセット音源もすっごく良いの。」
と、答えたとしたらどうでしょう?
なるほど、貴女の趣味は高く、
たしかにスロッビング・グリスルは、インダストリアルというジャンルの生みの親であるのみならず、
そこから派生したChris & CoseyやCoilも最高に良いんですけれど、
しかし、貴女の答えを聞いて、インダス音楽大好き男はきっとおもうでしょう、
(なんだよ、テンプル・オブ・サイキック・ユースの手先だな、メンドくさそう)って。


貴女が、インダス系音楽が大好きで、名グループの名を挙げるにしても、
たとえば、ナイン・インチ・ネイルズならば安心でしょう、
なぜならば、ナイン・インチ・ネイルズは、
最盛期に比べればいくらか凄みが薄れたものの、それでも立派なクオリティで、
ふつうのロック好きにもマニアにもともに愛されるめずらしいグループで、
貴女がその名前を挙げても必ずしも、
あなたがインダスおた宣言をしているとは受け取られないでしょう。


しかし、たとえば、ドイツが誇る超絶多作金太郎飴新規性皆無の名バンド、KMFDMにせよ、
ナパーム・デスでありながらおそろしくスローでヘヴィなGODFLESHにせよ、
常に作風を変えつつも一貫してサイバーパンクな世界観がすばらしいFront Line Assemblyにせよ、
洗練されたサンプラー使いの軽やかさが優美なスイスのThe Young Godsにせよ、
分解/再構築のオリジネイターがふるまう素敵に狂ったカットアップ・コラージュのMeat Beat Manifestoにせよ、
インダストリアルの規範的名グループ、Einstürzende Neubautenにせよ、
おもいがけなく現れた旧ユーゴスラビアのキュートでおっかねぇパロディ集団、LAIBACHにせよ、
もうなんと形容していいのかわからない、
オーストラリア1の狂人J.G.Thirlwellによる、手にしたその日から、誰にだって、プロ感覚でシンセが弾けるようになる画期的なシンセ講座のFOETUS、
はたまたそのJ.G.Thirlwellさんに師事していた、
イギリスの長身インダス貴公子、Raymond WattsのPIGにせよ、
そういうグループの名前をいきなり挙げるのは、ちょっぴり微妙。


ましてや貴女が、「Ant-Zenから出てるテクノイズ系大好き♪ 
わたし、もうほとんどのカタログ、揃えちゃった♪」
と答えたならば、どうでしょう?
これはかなり博打な答え方で、なるほど、テクノイズはEBMの進化系、
両者の音楽性は似ていながら違い、違っていながらどこか通じ合っている、
そんなテクノイズの魅力は喩えようもなく、
しかもAnt-Zenにせよ、Hands Productionsにせよ、
(マイナーな店構えでありながら、いずれも取り揃える顔ぶれは)圧倒的な名レーベルゆえ、
あなたがそう答えた瞬間、インダス音楽大好き男がいきなり超笑顔になって、
鼻の下がだら~んと伸びちゃう可能性もあるにはありますが、
しかし、逆に、(なんだよ、この女、アングラノイズおたくかよ)とおもわれて、
どん引きされる可能性もまた大です、
なぜって、必ずしもインダス系音楽大好き男がインダス音楽大好き女を好きになるとは、限らないですから。
しかも、この答えには、もうひとつ問題があって、
男たちは、女を導き高みへ引き上げてあげることが大好きゆえ、
もしも貴女が、「Cold Meat Industryが(あるいはその主宰Roger Karmanikの音源が)大好き♪」
なんて言ってしまうと、
そこにはもはや、男が貴女をインダス教育する余地がまったく残されていません、
したがって貴女のその答えは、
インダス音楽大好き男の貴女への夢を潰してしまうことに他なりません。


ま、ざっとそんな感じです、貴女の目には男たちはバカでスケベで鈍感に見えるでしょうが、
しかし、ああ見せて、男は男で繊細で、傷つきやすく、女に夢を持っています、
貴女の答え方ひとつで、男の貴女への夢は大きくふくらみもすれば、
一瞬で、しぼんでしまいもするでしょう。



では、スキットを繰り返しましょう。


「わたしは、スキニー・パピーが好き。
寝る前とかに聴くの、Nivek Ogreの死神ボイスはいつもカッコいいし、
cEvin Key率いるサイドプロジェクトも、大好き♪」
そして、その瞬間、インダストリアル大好き男の目がらんらんと輝いたなら、
貴女はこう重ねましょう、
「それからね、いま、わたしが行ってみたいところは、
ドイツのハンブルグ、素敵なクラブ・シーンがあるって噂を聞いたから。
あなたのお暇なときがあったら、わたしをドイツへ連れてって♪」
これでもう完璧です。


そうなったらこっちのもの、
デートの日には、ゴスメイクをばっちり決めて、厳ついマスクをつけて、
黒の網タイツか、蛍光色の入ったケバいレザーを着てゆきましょう。
その日から、インダス音楽大好き男は貴女の虜になるでしょう。
では、釣り師としての貴女の、愛の幸運と幸福をお祈りします!


ぼくと女友達とインダストリアル、ときどきFOOL'S MATE。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元ネタ。

https://tabelog.com/tokyo/A1301/A130101/13002457/dtlrvwlst/B113095398/

 

改変ネタの例。

azanaerunawano5to4.hatenablog.com

 

 5年も前に流行った(らしい)ネタを今更使うのはいかがなものか...と言われそうですが、たまたま見つけてしまったのが運の尽き。"インド料理"と"インダス音楽"って響きが似てません? え、似てない?そうですか...。

 

 "ダンスのスタイル"としてのいわゆる「インダストリアル・ダンス」から、バリバリのノイズ・ダークアンビエント系まで、かなり広範囲のものを「インダストリアル」 の名の下に並列させた結果、焦点がブレてしまった感は否めないですね...。まぁそれだけディープで楽しいジャンルだということで。

 

注:上記の文章中における各バンド・グループへの評価は、必ずしも管理人個人の評価とは一致しません。