Numb - Christmeister / Bliss

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 カナダのエレクトロ・インダストリアルユニットの2ndに、アルバム発表後に出したシングル「Bliss」の4曲(#3のリミックス3曲+未発表曲1曲、#10~14)を追加して再発したもの。オリジナルは Lively Artというフランスのマイナーレーベルからの発売でしたが、リイシューによってKK Records(EU盤)/Metropolis(US盤)に版権が移りました。ジャケも変更されています(下がオリジナル盤のもの)。

 

 このアルバムでは、前作でヴォーカルを担当していたSean Stubbsが抜け、代わりにBlair Dobsonが加入しています。この人のヴォーカルは暑苦しくかつ粘着質にネチネチ絡みつくというなかなか特徴的なもので、最初は1本調子過ぎるかな~と思ってたんですが、気がついたら病み付きになってました。特に#5での引きずるようなシャウトの伸び方とか凄いです。さらに4文字ワードも連発。海外のレビューで彼が"Madman"と称されていたのも頷けますね。

 そんなヴォーカルに引っ張られたのか、バックトラックも一気にアグレッシブに。動的な曲と静的な曲の比率が前作と逆転した感じで、#1, 6ではハードコアパンクスラッシュメタル的な要素も導入しています。こういった点は同時期に出た*1Skinny Puppyの「Rabies」を思わせますが、あちらは全体的にゴシックで湿った雰囲気だったのに対し、こちらはより乾いて殺伐とした印象。ドラムの音も抜けがよくて聴いてて気持ちいいです。一方で、#4,8,9のようなノイズ中心のインストも健在。不健全で病的な空気を保っています。強いて言えば、4つ打ちのダンスビートというよりは横ノリでじわじわ攻める曲が多いのが好みの別れるところかもしれません。

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 追加収録のリミックス3曲は、大胆なアレンジ変更こそないものの、どれもオリジナルから更にキックが分厚く攻撃的になっていて素晴らしいです。BPMも気持ち早めになって性急さが増した印象。B面曲の#13はかなりギターノイズが前面に出ていて、後の「Wasted Sky」の路線を予感させるものがあります。シングル盤はOceana Recordsとこれまたマイナーレーベルからの発売*2で入手困難なため、こういった形で聴けるのはありがたい限りです。

 

 時代柄か、彼らのキャリアの中では本作が最も典型的なEBMらしい音(あくまで他の作品と比較して、ですが)に近いと思います。またそんなEBMにギターノイズを違和感なく溶け込ませる手法の巧みさは、同時期のSkinny PuppyやFLAより1歩先を行っているといえるかも。陰湿で粘着質な音を好む性格悪い方()はぜひ。

 

Released Year:1996

Record Label: KK Records, Metropolis

 

Track Listing

  1. Dead Inside
  2. Cash
  3. Bliss
  4. Balance Of Terror
  5. Eugene
  6. Frantic
  7. What
  8. Christmeister
  9. Flesh
10. Bliss (Endurance)
11. Bliss (In Absentia)
12. Bliss (Fundamentalist)
13. Stiff

 

Pick Up!:#10「Bliss (Endurance)」

 原曲の地を這うようなシンベと、曲の上を縦横無尽に往ったり来たりするノイズはそのままに、キックをより重く・分厚くしたバージョン。個人的にリミックス3パターンの中ではこれが一番好きです。3:54~から挿入されるクワイアも地味に怖くてgood。

*1:オリジナル盤は1989年発売。

*2:オリジナル盤の「Christmeister」のUS盤もここからのリリースでした。