Swamp Terrorists - Combat Shock

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Released Year:1993

Record Label: Re-constriction Records, Sub/Mission Records, Simbiose Records

 

Track Listing

  1.Pale Torment

  2.Cynic Forage

  3.Right Here

  4.Spawn

  5.Comeback

  6.P.T.S.D.

  7.Liberator

  8.Pant To Injure

  9.Revelation

10.Jerks Ever Win

11.Right Now

12.Comeback (Edit)

13.P.T.S.D. (Back In Solitude)

14.Pale Torment (Hard 12" Mix)

15.Cynic Forage (Unnamed Remix)

16.Hit' Em (Justness Mix)

 

 スイスのインダストリアルユニットの3rdアルバム。この作品で本格的に世界進出を果たしたようで、アルファレコードから日本盤も出ていました。良い時代だ...

 

 彼らの音楽性は一言で言ってしまえば"インダストリアルメタル"なのですが、その内実は同時期のMinistryやKMFDMとはかなり異なります。ボディビートではなくアシッドハウスハードコアテクノ的なビートにザクザクしたスラッシュギターを組み合わせ、その上にPIGのRaymond Wattsを思わせるダミ声が乗っかるといういびつさは、まさにクロスオーバーの極み。でもそういった個々の要素が剥離することもなく、しっかりと噛み合っているのが凄いです。

 

 それとヒップホップの色も強く、歌い方もラップとまではいかないまでもかなりそっち寄り。けれどもそれほど"黒さ"を感じないという点では、「白いPublic Enemy」と称された(らしい)Meat Beat Manifestoとの類似を見いだせる気もします。こうした音楽性を彼らは"ストリート・テック・ビート"と自称していました。

 

 個人的に、もう一つMeat Beat Manifestoと共通していると感じる部分があります。それは音の解体・再構築の仕方。初期のMBMは、4曲のシングルをズタズタに分解して再編集し16曲入りのフルアルバムを作ってしまうほど、フリーダムな継ぎ接ぎをやっていました。いわばフレーズやメロディの違いではなく、カットアップした断片の組み合わせの違いで曲の個性を決めているような状態。そしてこのSwamp Terroristsも、同じようなスタンスで曲を作っているように思えます。後半にリミックスを大量に収録しているのもその表れでしょうか。

 

 特に#1とそのリミックス版#14を聴き比べると、ギターリフやリズムパターンがどのようなパーツから構成されているのか分かって興味深いです。他のインダストリアル系グループは、デジタルな技術を使いつつ如何にバンドらしく整合性を持たせるかを意識してる気がしますが、彼らはそういったことをまるで考えてないように思えます。聴いてて音の継ぎ目が分かるんですよね。ライブで再現しようとすると大変そうですけど...。

 

 次にどんな音が飛び出してくるかわからないスリリングさは、カットアップ中心のアプローチならでは。メタラー受けはしないかもしれませんが、MBMやMark Stewart、NINの"Fixed"みたいな、激しく解体された音が好きな方はぜひ。あと、ガバやハードコアテクノが好きな人にインダストリアルメタルを紹介する時は、Ministryよりこっちを勧めるべきでしょう...そんな機会があるのかという突っ込みは無しで。

 

Pick Up!:#8「Pant To Injure」

 変則的で予測不能な展開が多い中で、これは直線的なビートと小気味よい歌い回しが癖になるシンプルな高速トラック。とにかく勢いがあって気持ちいいです。押せ押せー!