A Split - Second - A Split • Second
Released Year:1988
Record Label: Wax Trax!
Track Listing
1.Flesh
2.On Command
3.Check It Out
4.Rigor Mortis
5.Scandinavian Bellydance
6.Burn Out
7.Colonial Discharge
8.Drinking Sand
9.Close Combat
ベルギーのEBM/ニュービートユニットの音源を、アメリカ市場向けにまとめたコンピレーション。米国でのディストリビューションを担当していたWax Trax!からの発売です。
いわゆるニュービートの生みの親とされるこのユニット。#1の45回転シングルをあえて33回転で回す、つまりテンポを落としてクラブでかけたところ客に大受けし、これがきっかけとなってニュービートという新たなムーブメントが生まれた...といわれています。そしてこのニュービートは、後にアシッドハウスと融合しトランスへと発展した*1ので、そういう意味ではテクノ史的にも結構重要な立ち位置のグループといえるかも?
とはいえこのアルバム、聞く限りでは普通にEBMです。特に前半に収録されたグループ初期の曲は、Front 242と聞き分けがつかないかも。某サイトでは「音もビートも凡庸」などと一蹴されていましたが...(汗)。
でも#5や#7のようなニュービート誕生以降の曲は、よりスローテンポかつシンセを前に出した造りになっていて、少しづつ違うベクトルを目指し始めているのがわかります。この辺りは、Front 242が哀愁メロディを引っ込めてビートを強調していったのと対照的ですね。加えて、#6などはほとんどポジティブパンクのような趣でおもしろいです。さすがにメインのフレーズはシンセが担っていますが、ビート感はロックのそれだし、ヴォーカルも普通に歌ってるし。しかもこの人、The Sisters Of MercyのAndrew Eldritchみたいなルックスしてます。こういう所からも、EBMのルーツ(の1つ)はポジパンというのを感じることが出来ますね。
ちなみに、#9で突然挿入される日本語のサンプリングは、「キングコング対ゴジラ」(1962年公開)に登場する製薬会社の宣伝部長の台詞です*2。ゴジラ映画で初めての日米合作となり、米国での上映も視野に入れたためか、当時のステレオタイプな日本人顔(黒縁メガネ+出っ歯のオッサン)のキャラクターとして登場していました。コメディタッチのハイテンションな演技が印象的でしたが、まさかこんなところで耳にするとは...。
全9曲とややボリューム不足なのが惜しいですが、鉄骨ビートをガシガシいわせる脳筋ボディとはまた違うEBMを楽しめる作品です。ポジパンからEBMが生まれ、さらにEBMがトランスへ進化していく様子を感じることの出来る興味深い1枚。
Pick Up!:#7「Colonial Discharge」
このアルバムの中では最もトランスに近い雰囲気でしょうか。ヴォーカルを最低限に抑え、スローテンポなビートと妖しげなシンセで魅せる1曲。アラビアンな香り漂う荘厳な雰囲気が美しいです。
*1:こちらのページ→http://www1.meijigakuin.ac.jp/~hhsemi10/club8.htmlを元に書いています。日本語版wikiのトランスの項にも同様の記述がありますね。