V.A. - KK Electrip Compilation

f:id:giesl-ejector:20181108004827j:plain

 

Released Year:1993

Record Label:Restless Records

 

Track Listing (Artist - Track title)

  1.Dogpile - Poundcake

  2.Numb - God Is Dead

  3.Psychick Warriors Ov Gaia - Exit 23

  4.Kode IV - Hollywood

  5.Deathless - Inexstasis

  6.Catalepsy - House Of Despair

  7.Minister Of Noise - Just Can't Run

  8.Blue Eyed Christ - Catch My Fall

  9.Sloppy Wrenchbody - Obstacle

10.Exquisite Corpse - Honeymoon

11.Insekt - Dreams In Pockets

12.Halo - Not At All

13.Plastic Noise Experience - Dream Destruction

14.Swains - That's What We're Living For

 

 ベルギーのインダストリアル系レーベルによるコンピレーションアルバム。このアルバムは、KK RecordsとそのサブレーベルであるElectripのグループを集めたレーベルコンピとなっています。

 

 KK Recordsといえば、日本は札幌出身のEBMユニット2nd Communicationが所属していたレーベルとして、一部の界隈では有名かもしれません。その他にも、80年代にはVomito NegroやFront Line Assemblyなど数多くのボディ系グループを擁していたKKですが、90年代に入ると少しづつその色を変え始めます。

 

 既に各所で語られている通り、80年代末に盛り上がったEBMブームは、その後トランスやテクノへと発展解消していきました。そんなシーンの移り変わりの中でKKもそちらへと歩みを進めていった訳ですが、特にこのレーベルの特色として挙げられる(と勝手に思っている)キーワードは「ダブ」。といってもOn-Uのようにアナログでノイジーなそれではなく、ひたすら冷たく沈み込むような、ダークでアンビエントなタイプのダブです。90年代後期になると、Mick Harris率いるScornや、そのMick Harrisとも交流があったSielwolf等が在籍していたのも、そのことをよく表しているように思います。一方、インダストリアルメタルやグランジの隆盛も無視出来なかったようで、そういったバンドを専門に扱うElecrtripのようなサブレーベルを立ち上げたりもしています。(これは短命に終わったようですが...)

 

 さて、このコンピはというと、そんな過渡期を迎えたレーベルの様子をずばり切り取った内容。まだまだボディで聴かせる#2,8,11,13、ゴリゴリしたメタルで攻める#1,6,7、ダブ色の強い#3,7、テクノ・ハウス寄りの#4,10まで、見事に方向性がバラバラです。極めつけは#12と#14。前者は何の捻りもないギターロック、後者はコミカルで能天気なハウスチューンで、どちらも完全にアルバムの雰囲気から浮いています(苦笑)。したがって全体の統一感は望むべくもないのですが、逆に言えば程よく変化に富んだ構成で、飽きることなく聴き通すことができます。アゲアゲ()のトランスに舵を切ったAntler-Subwayや、インメタやボディにこだわり続けたZoth Ommogなど、同時期の他のレーベルに比べると中途半端な印象はぬぐえないのですが、この雑多な感じがまたおもしろいという見方もできるかもしれません。

 

 また、全体的に独特の閉塞感・密室感が漂っているというか、今ひとつすっきりしない鬱屈した空気を感じるのは、やはり北欧という土地柄でしょうか。そういったところも、ダウナーでダブ寄りなテクノの発展に寄与しているのかもしれません。特に、民族的な旋律とぶっといベースが酩酊感を誘う#3は、「トライバルテクノ」と呼ばれるジャンルの走りとなった曲だそうで。そういえば、90年代後半にテクノ化したTest Dept.なんかもKKに所属していましたが、確かにその辺りとも繋がる音です。このように、EBMがその姿を変えていく過程をつぶさに観察できるのが、90年代のコンピを漁っていて楽しいところですね。

 

 ちなみに、#2は裏ジャケを見ると曲長さが6分28秒あることになっていますが、蓋を開けたら普通に4分20秒のアルバムバージョンでした。てっきりここでしか聴けないリミックスか再録かと期待したのに...。あと#13のタイトルは「Dream Destruction」ではなく本当は「Dream Destructor」です。この手のアルバムに誤植は付き物とはいえ、担当者しっかりしろよと。

 

 Pick Up!:#13「Plastic Noise Experience - Dream Destruction Dream Destructor」

 で、そのタイトル誤植曲ですが、これがまた80年代のThe Klinikを思わせるダークなEBMで素晴らしい。ビートの圧力は弱めで低音域の隙間が多い音作りですが、不安感を呼び起こすゴシカルなシンセとザワザワしたヴォーカルのコンボがとにかく冷徹で無慈悲。ミニマルな構成も却って冷たい印象を高めており、真綿でじわじわと首を締めるように絶望感を煽ります。終盤のDream Destructor! 連呼の畳み掛けでとどめ。こういう性格の悪そうな曲、個人的に大好きです。