Dive - First Album

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Released Year:1992

Record Label:Minus Habens Records

 

Track Listing

  1.Infected

  2.There's No Hope

  3.Dead Or Alive

  4.Right

  5.So Hard

  6.Attack

  7.Turn Me On

  8.Run

  9.Ghostcity

10.31

11.Menticide

12.Nightshift

13.Burning Skin

14.Eye Of The Past

15.Back To Back

16.Timezone

17.Shadows Of You

18.Sparks

 

 ベルギーのアーティストDirk Ivensによるソロ・プロジェクトの1stアルバム。元はセルフタイトルアルバム"Dive"として1990年にLPのみ発売されていたものに、未発表曲(#12~18)を追加してCD化されたもので、アートワークも変更されています。

 

 このDirk Ivensという人は、1980年代前半からAbsolute Body Control(略してABC)やThe Klinikというユニットで活動しているベテランで、現在もDive名義で活動*1しているほか、自身で複数のレーベルも運営しています。その関係で、この辺のアーティストのクレジットを見ていると、結構な頻度でサンクス欄に名前が挙がっていたりして、まさにベルジャンEBM・インダストリアルの重鎮。

 

 EBM最盛期の80年代後半にはFront 242をさらにミニマルでダークにしたような暗黒ボディを展開していたThe Klinikですが、Dirk Ivensは方向性の違いから1990年にグループを離脱。新たにこのDiveを始めたわけですが、これがまた強烈な音となっています。反復されるビートの上をダミ声ヴォーカルががなる...というのはその他のEBMグループと同じですが、決定的に違うのはその音質。ドラムからシンセベースからヴォーカルまで、全ての音が腹に響くような重低音。しかも原型を留めないほど過剰なエフェクトがかけられており、一瞬再生機器がぶっ壊れてるんじゃないかと疑いたくなります。スネアの割れ方とか、まさに壊れたスピーカーから聞こえてきそうな音。曲によっては早々ビートすらも放棄していて、ただのハーシュノイズになってます。これは確かにKlinikとはまったくの別物で、袂を別ったのもうなずけますね。

 

 あと、Klinik時代はわりと線の細い音作りをする印象でしたが、このDiveはもっと太くて破壊的。それでいて曲構成は相変わらずミニマルなので、却って脅迫的な効果が高まっています。それもダンスミュージック的な反復というより、ただただキックをループしてるだけといった趣で、はなから踊らせることなど眼中にない様子。一作目ということもあってか、初期衝動をそのままぶつけたかのように直情的で、それぞれの曲もワンアイディアで突っ走ってる印象があります。その上デス声で「There's No Hope...!」と絶望的なオブセッションを聴かされ続けた暁にはもう...屋上からDive To Blueするしかないですね(?)

  

 少なくとも90年代初頭の時点でほかに類を見なかったこの音作りは、その後EBMやインダストリアルメタルとはまた別に、リズミック・ノイズあるいはテクノイズなどと呼ばれるジャンルへと発展したようです。確かにこのビート感はわりと非ロック的というか、ライブなんかで盛り上がるにはあまりにもミニマルすぎる気がして、どちらかというとテクノ寄りの作りだなと感じます。ちなみに、本人もその後Sonarという別ユニットを立ち上げますが、そちらはさらに強烈なノイズを用いた、より後発のテクノイズに近いスタイルとなっています。それに比べてこのDiveはもっとダークで沈んでいるというか、ドロドロした生々しさが残っているのが特徴と言えるかも。あと、本作で聴ける「聴こえる音全部割れてます」というノイジーなスタイルは、:wumpscut:やSuicide Commandoなど、一部のダークエレクトロ勢が逆輸入して取り入れていますね。

 

 初期インダストリアル組の持っていたミニマルでダークな情景を、EBM以降のテクノロジーで再構成した暗黒ビート・インダストリアル。同じ「ぶっ壊れ系インダストリアル」でも、Skinny Puppyやその影響下にあるアーティストはそれなりに彩度のある音を鳴らしてますが、このDiveはジャケの通りひたすらモノクロームな世界観です。よく言えばストイック、悪く言えば単調...。TGやSPKなどと同じく、聴き手を突き放してくるタイプの音楽なので、人によっては聴くのが辛いと思われるのが難点でしょうか。

 

 あと他のベルギー産EBMと同じく、そもそもCDが非常に入手困難です。私も先日、某所でこれを発見した時は自分の目を疑いましたし...。興味がある方は、今ならダウンロード販売でも初期シングルなどをまとめた形で購入できるので、そちらでの入手をお勧めします。

 

Pick Up!:#3「Dead Or Alive

 以前弊ブログで紹介したAntler-Subwayのコンピにも収録されていて、そこで初めて耳にした曲。明らかに他のボディ系とは違う、ズシンズシンとした音に「何だこれは?」となったのを覚えています。単調な曲が多い本作の中においては、一番躍動感がある曲かも。あと歌詞もわりと凶悪というか、タイトル通り殺伐としてます。

*1:今年の6月には約20年ぶりに来日公演もおこなった様子。行けなかったのが残念...。