TRIAL - 1

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 イギリス出身の"ディストピアン・スラッシュ"*1ユニット、TRIALのデビュー作(1stEP)。このグループの存在はTwitter経由で知りました。"Def Masterみたいな音"と紹介されていたので興味を持ったんですが、蓋を開けたら想像以上のクオリティにぶっ飛ばされましたね。

 

 一聴して耳を惹くのがギターの音作り。ハイファイでソリッドなサウンドを好むメタラーが顔をしかめそうなひしゃげた音で、まるで自主製作のデモ音源のようです。しかし、その80年代ハードコアパンクを思わせるノイジーなギターサウンドで繰り出されるのは、まさに王道を往くスピーディ&スラッシーなリフ。ザクザクと小気味良い刻みを中心に、ツインギターでユニゾンしたり、速弾きソロを展開したりと、どう考えてもパンクシーンからは出てこないであろうスタイルで聴かせてくれます。メタリカやスレイヤーといった超大御所が脳裏をよぎるリフ構成やアレンジは、もはや古典的とすら言えるレベル。5曲20分というトータルタイムをあっという間に駆け抜けていきます。

 

 そこに乗るVo.が醒めきっているのも興味深いところ。実に無機質かつ淡々としていて、吠えたり叫んだりすることが全くありません。感情を排したように低音でボソボソ呟くスタイルは、どちらかと言えば近年のEBMグループのダミ声に近い感じ。ドラムは人力と思われる音ですが、こちらも単調な直線ビートの反復に終始しており、メタル的な手数の多いドラミングよりもプリミティブな質感です。サンプリングの類といった装飾も最小限で、とにかくストイックに研ぎ澄まされた音という印象を受けますね。

 

 ここまで書いてきて思ったんですが、全体的な音像はGodfleshに近いんですよね。特に、ノイジーでざらついたギターの質感はGodflesh(あるいはその影響元であるKilling Joke)にも通ずるものを感じます。ただし決定的に違うのは曲のスピード。このアルバムにはJ.K. Broadrickがナパームデスから脱退した際に、意図的に捨てた"速さ"があります。同じナパームデス脱退組のScorn(初期)にもある程度のスピード感は残っていましたが、このTrialはそれ以上。加えて前述の通り、Godfleshやその一派が絶対にやらないような「王道メタル」のスタイルで無邪気にギターを弾き倒していますから、もう余計に異質。GodfleshがSlayerをカバーしたら…という妄想をそのまま形にしてしまったかのような仕上がりです。

 

  で、調べてみると、このユニットの2人組はそれぞれKhostとPrimitive Knotというバンドのメンバーのようです*2。特にKhostについては、Godfleshとスプリットシングルを出したり、メンバーがTechno Animalにも関わっていたりと密接な繋がりがある模様。ほとんど電気的処理がされていないのにも関わらずこのインダストリアル・ドゥームな空気感は…と思っていたのですが、やはり…という感じですね。

 

 いわゆる"Godflesh系"のバンド群は、メタルよりもポストパンク・ハードコア系統からの影響が強いためか、王道メタル的なスタイルを嫌う(あるいは避ける)傾向が強いという印象があったのですが、このTRIALはそういった照れ隠しが皆無。誰もが通るであろう、メタルを聴き始めた当初の「メタル・キッズの顔」をおくびもなく覗かせています。素直なメタル愛を隠さず、それでいて絶対零度なハードコア、インダストリアル・ジャンクの要素も忘れていないという、個人的には最高のバランスを保っているこのユニット、本作に続く新たな音源も制作中とのことで、今後の動向が注目されますね*3

 

Released Year:2020

Record Label:(self released)

 

Track Listing

  1. Eyes Against Infinite Suppression
  2. Colony Of Trial
  3. Steel Premonition Against Time
  4. Towers Of Short Term Lies
  5. Mannequin Eyes
 

 Pick Up!:#5「Mannequin Eyes」

  比較的スローでヘヴィに始まったと思いきや、1分過ぎから爆速驀進モードに早変わり。終盤は再びテンポを落としつつ、最後はドゥームで不穏なピアノで締めるという凝った展開の曲。「初め五月蠅く、終わりはピアノでしっとり」というのもNIN以降の定番ではありますが、こういうアレンジにもただのメタルで終わらないメンバーの経歴が出てるなぁと感じますね。

2nd Communication - 2nd Communication

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 同じ札幌出身のDRPと並んで「国産EBM」を代表するユニット、2nd Communicationの1stアルバム。メンバーはDossa Yun (programming, voice, sampling)、Toshiani Ishida (sampling, metal machinery, DJ)、Trast C. Howard (voice, sampling, video)の3人。名前からわかる通り、外人1名を含む3人組というちょっと変わった構成のユニットです。1989年にベルギーのEBM系レーベルであるKK Recordsと契約を結び、同年8月にリリースされたのが本作*1DRPのTomoyuki Murashige氏もエンジニアとして参加しています。

 

 このユニットに関する情報はネットでもなかなか見つからないのですが、前回のエントリで取り上げたMIX創刊号にインタビュー記事が掲載されており、非常に貴重な情報源となっています。例えばデビューのきっかけについては、元々メンバーの友人女性が渡欧した際にThe Klinik*2のメンバーに彼らのデモテープを渡し、それをThe Klinikが面白がってKK Recordsのオーナーに聴かせたところ、オーナーがその音源を気に入ったことで契約を持ちかけられた…というのが事の経緯だそうです。当時のEBMシーンにおいてアジア出身のグループはほぼ皆無だったと思われるので、これはなかなかの快挙。デモの時点で、本場の人間も興味をそそる"何か"を持っていたのかもしれません。

 

 本作以前にも、国内インディーズで発表していた自主製作のカセット音源が存在するようですが、その頃の音は先述のインタビュー曰く「ノイズ・アヴァンギャルド(笑)」だったそうで。当時のFool's Mate誌のレビューでは「必死にカレント(Current 93)をやっている」「フィータスばりのジャンク・ビート」などと形容されています*3。その後サンプラーを導入したことで、本作のようなEBM型のスタイルに移行したようです。

 

  そんなバックボーンの影響かは分かりませんが、これが強烈なエレクトロニック・ジャンク。前述インタビュー記事のアオリに「凄絶なエレクトロハードビートには、ミニストリーも顔負け」とありますが、冗談抜きでそのレベルの音を繰り出してきます。当時勃興した数多のEBMユニットの中でも、ミニストリーやリヴォルティング・コックス(及びその周辺ユニット)だけが持っていた"ビートの重さ"を備えているんですよね*4。一音ごとに鳩尾を殴打されるような、ズシリと腹に響くビート感。まさに「Twitch」の1曲目、"Just Like You"のイントロを思い出させる質感がここにあります。 その他、キーボードを連打する姿が目に浮かぶ執拗なサンプリングボイスの挿入や、極端にイコライジングされほぼノイズと化したヴォーカルなども、どことなくリヴコ的。

 

 ただ、こうしたロック的攻撃性を持ちながらも、曲構成はあくまでテクノ的なのがこのユニットの特徴。歌というよりはサンプリング的な使われ方のヴォーカルを始め、曲中にメロディ要素は皆無ですし、先述した音圧の強さを保ったまま、目立った展開もなく徹頭徹尾同じフレーズを反復していくので、アルバム後半はほとんど拷問状態。ぶっちゃけ9分~11分もある#4,5はちとしんどいです。テクノが浮遊感や酩酊感を反復することで覚醒を促すのに対し、暴力的なマシンビートを反復する本作は強制的に肉体をメタモルフォーゼさせられているような…。そういう意味では初期のノイズ・アヴァンギャルド路線を踏襲しているとも言えますし、逆に言えば後年に出現するリズミックノイズ/テクノイズといったジャンルの方が、EBMよりも本質的には近いのかもしれません。それほどストイックで容赦のない音です。

 

 そんなわけでちょっと不愛想なきらいはあるものの、同時代のベルジャンEBMよりも遥かにハードで強烈*5な音は必聴。CDでの入手は難しいですが、実はApple Storeには普通にディスコグラフィが揃ってたりする*6ので、未聴の方はいますぐ聴きましょう(迫真)。ちなみに、2ndアルバムはこの路線を維持しつつCD版では70分越えのボリュームなので、さらに拷問度合いがアップしています。こちらもマストアイテム。

 

Released Year:1989

Record Label:KK Records 

 

Track Listing

  1. Mambo Fucker
  2. Sow Sow The Propaganda
  3. Feed Back
  4. Count Down
  5. Steel & Concrete
 

 Pick Up!:#2「Sow Sow The Propaganda」

 曲単位ではこのグループの中で一番好きかも。やや早めのマーチングビートにデケデケシンベと煽情的なシンセが乗るだけなんですが、1つ1つのパーツが的確にツボを突いた仕上がりで最高です。縦横無尽かつジャストのタイミングで挿入されるサンプリングのセンスにも、リヴコやTKKを思わせる部分がありますね。ちなみに"sow"とは"種をまく、植え付ける"という意味合いの動詞らしく、つまり"Sow Sow The Propaganda"とはソウいうことですな。ソウソウソウソウソウソウ…

*1:札幌出身のエレクトロ/テクノ系アーティストといえば、1993年にベルギーのR&Sと契約しデビューしたKen Ishii(ケン・イシイ)が有名です。そのためか、"ケン・イシイよりも先に海外レーベルと契約したユニット"として語られることもしばしば。

*2:ベルギーの古参EBMユニット

*3:Twitter情報ですが、当該インタビューはこちら。→https://twitter.com/ButtholeGalore/status/1286845748370272258

あとはこんなフォーラムの情報も。→https://www.special-interests.net/forum/index.php?topic=41.0

*4:あとは強いて言うならDessauぐらい?ちょっとベクトルが違いますが。

*5:本人もインタビューで「僕たちの音はフロント242なんかよりも重くて硬い」と発言しています。

*6:こちらに。→https://music.apple.com/jp/artist/2nd-communication/1396730436

とはいえ、今や音楽業界から足を洗ってしまったメンバーの許可を得ているとは考えにくいので、複雑な心境ではあるのですが…。

V.A. - 21st Century Quakemakers Volume 2

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 イタリアのオルタナ系レーベル*1Contempo Recordsのサブレーベル、BBATのレーベルコンピ第2弾。とはいってもBBATの活動はかなり短命で、このシリーズコンピ2枚と12" シングルを数枚リリースしたのみであっさり閉鎖してしまった模様。

 

 そんなマイナー街道まっしぐらなコンピではありますが、EBMマニアにとってはこれがなかなかの好盤。オープニングを飾るPankowはもちろんのこと、そのサイドプロジェクトであるHardsonic Bottoms 3とSanta B. Boysも、本家に負けず劣らず良質なボディビートを聴かせてくれます。特にSanta B. Boysは、とぼけたような電子音と硬質で重めのキックの取り合わせが癖になりますね。Wax Trax!からの外部ライセンスであるKMFDMとThrill Kill Kultも、前者はハードレゲエ・ダブ風味、後者はハウス風味のボディで違和感なくアルバムに溶け込んでいます。

 

 ちなみにこのコンピは、「MIX」*2創刊号のディスクレビューで、あの石野卓球氏が紹介していたことでも知られています。いわく、「はっきり言ってPIASのコンピレーション"エレクトリック・ボディ・ミュージック"*3の百倍良い!」だそうで、揃ったメンツにしても選曲にしても、毒舌家の氏には珍しく(?)手放しで絶賛されております。この当時はまだEBMを好んで聴いていたんですね~*4

 

 実際のところベルギー発の「This is Electronic Body Music」は、表題はEBMと言いつつもその実ポジティブパンク・ダークウェーブと呼ばれるバンドが中心。The Neon Judgemenやà; Grumh...、The Cassandra Complexなど、EBMというよりは"シンセサイザーを導入したゴシックパンク"といった面持ちで、全体的な雰囲気としても仄暗くひんやりとした、ヨーロッパ北部の空気を濃厚に感じる内容でした。

 

 一方の本作を語るうえでのキーワードは、ずばり"アシッド・ハウス"。#3や#9といったモロなグループはもちろん、前述のPankow関連の音源にも共通してアシッドの影響を感じます。TKKがちょうどハウス路線に接近を始めたころの萌芽である#8が収録されているのも象徴的*5。このように、全体を通じてイタロ風味ともいうべき陽性のエネルギー、生命力といったものに満ち溢れているんですね。まさにイタリア・ギリシャといった、温暖なヨーロッパ南部のイメージ。EBMの持つ「躍動する筋肉!迸る汗!」といった肉体性に加え、こうしたハウスムーヴメントの影響が色濃く反映されていた点も、卓球氏の耳を惹いたのではないでしょうか。

 

  イタロハウス風味の牧歌的なEBMがズラリと並んだこのコンピは、さんさんと照りつける太陽の下、ビーチでワインでも飲みながら聴きたい1枚です。そんなシチュエーションでEBMを聴きたくなるのかというツッコミはさておき。

 

Released Year:1989

Record Label:BBAT

 

Track Listing (Artist - Track title)

  1. Pankow - Germany Is Burning
  2. Clock DVA - Hacked (Reprogrammed III)
  3. Unique And Dashan - House Is Taking Over
  4. Hardsonic Bottoms 3 - Mr. Walker (The Convincing Version)
  5. Carlos Perón - A Hit Song
  6. Santa B. Boys - Canaria Canaria
  7. KMFDM - King Kong Dub Rubber Mix
  8. The Thrill Kill Kult*6 - The Devil Does Not The Drugs
  9. The Shamen - Splash 2

 

  Pick Up!:#5「Carlos Perón - A Hit Song」

  70年代末から活動するスイス出身のシンセポップデュオ、Yelloの片割れであるCarlos Perónのソロ作品。この人の経歴には詳しくないのですが、どうもこの時期(80年代末)はEBMブームの波に乗る形でこっち方面に舵を切っていたようです。ですがそこはベテランの意地なのか、アップテンポかつなかなか緊張感のある音で素晴らしい。これ以前はダークウェイブ系の音を鳴らしていたようですが、男声コーラスの使い方などにその名残も感じますね。

*1:一部界隈ではPankow、Clock DVA、Lassigue Bendthaus等が所属していたことで知られていますが、カタログを見ているとPixiesCocteau Twins、Christian Deathなどもリリースしているので、特にエレクトロニック至上主義!というわけでもなさそうです。

*2:「FOOL'S MATE」が邦楽専門誌になった際、それまでの洋楽部門を別冊として独立させて創刊された雑誌。その後の「remix」誌の原型となりました。

*3:文字通りEBMというジャンルを定義付けたといわれるPlay It Again Samのコンピレーション、"This Is Electronic Body Music"のこと。この当時、EBMは"エレクトリック・ボディ・ミュージック"と誤読(正しくはエレクトロニック~)されていたそうですが、ここでもその様子が見て取れますね。

*4:その後アシッドハウスやヒップホップの台頭に伴い、氏の趣味もそちらへ移っていきます。本人曰く「それまでボディ・ミュージックとかも聴いてたんだけど、それがバカバカしく聴こえてしまった」らしい。出典はここhttps://www.redbullmusicacademy.jp/jp/magazine/interview-takkyu-ishino

*5:リミックス前のオリジナルである"First Cut"と比べると、明らかに方向性が変わってきていることがよく分かります。

*6:ご存じの通り、本当は"My Life With The Thrill Kill Kult"なんですが、このアルバムではこういう表記になっています。まぁ無駄に長いし略したくもなるよね(?)

Meat Beat Manifesto - Armed Audio Warfare

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 言わずと知れた「分解/再構築のオリジネーター*1による2ndアルバム…といいつつ、実質的には初期音源をまとめたレアトラック集だったりします*2。元々、"Armed Audio Warfare"というのは1989年に発売が予定されていた1stアルバムのタイトルでした。しかし、マスターテープを保管していたメンバーの友人宅が火事になり、マスターは焼失してしまいます*3。その代替として、初期シングルをズタズタに編集したリミックス集のような形で1stアルバム"Storm The Studio"がリリースされたのは周知の通り。そして本作は、初期シングルのB面曲やコンピレーション提供曲、未発表曲を集め、焼失した"幻の1stアルバム"を疑似的に再現したものとされています。「当初の予定通りに1stが世に出ていればこんなアルバムになった筈」とは英語ライナーノーツの弁。

 

 MBMは時期によってスタイルがかなり異なりますが、インダストリアル・EBMスキーにお勧めするとすれば間違いなく本作を推します。というか、そういう人は最低限このアルバムのみ押さえておけば十分かもしれません。それほどまでに、本作には過激な初期衝動が満ち満ちています。ノイズ成分もかなり強めで、Wax Trax! からリリースされたのも納得の内容です*4

 

 特に凄まじいのが#6~8の一連の流れ。これらは1500枚限定で発売されたデビューシングル"Suck Hard EP"の音源なのですが、中期Skinny Puppyを想起させるほどのノイズの砂嵐が吹き荒れる音像に驚かされます。特にビートすら捨て去った#6は、もはやパワーエレクトロニクスの域。大音量で聴くと覚醒しまくります。ちなみに本作の裏ジャケでは、#6と#7のタイトルが入れ替わって表記されるというミスプリントがあり混乱を生じているので要注意。正しくは#6のパワエレノイズ曲が"Kick That Man"、ビート・ラップ有の#7が"Kneel & Buzz"です*5

 

  その他、初期の代表曲である"Strap Down"の別バージョンである#9では、ウルトラマンの怪獣ジラース*6の声をサンプリングしているなど、全編通じて雑多すぎるほどのサンプリングセンスが光ります。この辺り、元ネタがもっと分かっていればさらに楽しめるんだろうな~と。こういう音楽を聴くときは、いかに多種多様な音楽ジャンルを知っているかという、ある種の教養が試されている感じもありますね(もちろんそんなもの無くても楽しめはするんですが)。

 

  「分解/再構築のオリジネーター」たる彼らの極致という意味では1stアルバムに軍配が上がりますが、全方位に発散される直情的な攻撃性を楽しめるという点ではコチラが上。単なるハーシュノイズ一辺倒のアーティストとはまた違う、とにかくガチャガチャと騒がしい・やかましい音に溺れたい人向けです。インダストリアルは好きだけどヒップホップは…という人も、これなら抵抗なく聴けるんじゃないでしょうか。

 

Released Year:1990

Record Label:Wax Trax! Records / LD Records

 

Track Listing

  1. Genocide
  2. Repulsion
  3. Mister President
  4. Reanimator
  5. I Got The Fear
  6. Kick That Man
  7. Kneel & Buzz
  8. Fear Version
  9. Give Your Body Its Freedom
10. Marrs Needs Women
11. Cutman

 

 Pick Up!:#1「Genocide」

  これも初期の代表曲"God O.D."の未発表リミックス。畳みかけるようなスピード&キレを備えたラップと、スクエアに弾けるようなスネアの組み合わせが堪りません。このバックトラックは本人たちも気に入ったのか、後の3rdアルバム"99%"に収録された"Psyche Out"(アルバムバージョン)にも流用されています。どうでもいい情報ですが、私が普段歩く時のテンポはこの曲とぴったりリズムが一致するので、外出時にはつい聴いてしまう1曲だったり。いやシンクロさせて歩くとホント気持ちいいんですよコレが。

*1:元は藤井麻輝氏が"Actual Sounds + Voices"をレビューした際にMBMを指して使用した言葉らしいです。当該雑誌を所持していないので明確な出典は不明ですが…。

*2:フルレングスと扱うかコンピと扱うかは解釈が分かれますが、英語版wikiとdiscogsでは2nd扱いとされているので本記事ではそれに倣いました。

*3:詳しい経緯はこちらのインタビュー→The Quietus | Features | A Quietus Interview | "An Amazing Drug Like Quietus": Jack Dangers Of Meat Beat Manifesto Interviewed を参照のこと。

*4:後にジャケを変えてMuteからもリリースされています。

*5:字面としては何となく逆の方がしっくりくるんですけどね…。

*6:アップロード時レッドキングと勘違いしていましたが、正しくはジラースの声でした。過去にTwitterでも呟いておきながら、当の本人が忘れているとはお恥ずかしい…。

Pankow - Svobody!

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 イタリア産EBMグループの、未発表曲やリミックス等を集めたコンピレーションアルバム。タイトルはチェコ語で"自由"という意味らしいです。

 

 内容としては、Adrian Sherwoodのプロデュースで有名な2ndアルバム収録曲のセルフ・リミックスが5曲(#1,4,6,8,10)、アルバム未収録曲が3曲(#2,3,9)*1、新曲が2曲(#5,7)。最後の3曲(#11~13)はCD版のみの収録で、表記はありませんがプロ・リミックス集団のRazormaid*2によるリミックス。悪くはないんですが、このグループの持ち味とはちょっと方向性が違う気がしてあまり聴いていません…。

 

 というわけで、注目すべきはやはりセルフ・リミックス。オリジナルではシャーウッドがプロデュース・ミキシングしていたものを、わざわざ自分たちの手でミックスし直しています。このコンピが出たのは、シャーウッドの手を離れて一人立ちした3rdアルバム「Gisela」の後ですから、3rdで手応えを感じたバンド側が、自分たちの手で過去作品を再構築したくなったとみるのが自然でしょう。BUCK-TICKの「殺シノ調ベ」と同じ立ち位置の作品と言えば、一部の方には判りやすいかもしれません。

 

 自分は2ndをいまだに入手できていないため、オリジナルとの比較はできないんですが、前衛的な#10以外は、どれもグループの勢いが伝わってくる仕上がりで素晴らしいです。3rdと同じく、On-Uを通過しつつよりソリッドに洗練された感のあるエレボで、特に#4,6,8がお気に入り。一方で未発表の2曲は、妙に人懐っこいメロディと浮遊感を湛えた#5、神経質なストリングスを主軸に終始不健康な雰囲気で進む#7(タイトルもかなり物騒)と、どちらもスローテンポでやや実験的な要素を取り入れており、脱・EBMを図る次作以降の路線が垣間見られて興味深いです。ちなみにあまり知られていませんが、#5はなぜかPVも作成されています。

 

 その他、#3はシングル以外ではこのアルバムにしか収録されていませんのでこちらも貴重。この曲にもPVが存在しますが、Front 242の"Tragedy For You"よろしく、なかなかにシュールで意図を図りかねる仕上がりになっております。こういった芸風はEBM界隈のお約束か何かなんでしょうか?

 

 このグループは基本的に牧歌的かつ独特の癖があるので、サイバーで近未来的なEBMを好む方には合わないかもしれませんが、DAFや80年代ボディが好きな方にはオリジナルアルバムと併せてお勧めしたいアルバムです。入手はかなり困難かと思われますが…。

 

Released Year:1991

Record Label:Contempo Records

 

Track Listing

  1. Nice Bottom / Schöner Arsch (Justified Remix)
  2. Kunst Und Wahnsinn (The 3rd Remix)
  3. Rememberme (7" Edit)
  4. Gimme More (Much More) (o.4.$.remix)
  5. Love Is The Biggest Pig
  6. She's Gotta Be Mine (1991 Remix)
  7. No Fun (In Droppin' Bombs On Berlin Or Bagdad)
  8. Sickness Takin' Over (Erased Version)
  9. Germany Is Burning (Verbombte Version)
10. She's Lowtta Be Mine
11. Sickness Takin' Over
12. Rememberme
13. Me And My Ding Dong

 

 Pick Up!:#4「Gimme More (Much More) (o.4.$.remix)」

 ガガガガ!!ズドドド!!と、建築現場を思わせる鉄骨乱打ビートが炸裂するゴキゲンな1曲。徹頭徹尾勢いだけでゴリ押ししてくるこの疾走感は癖になりますね。ギミ♪ギミ♪ギミ♪ギミ♪とダサさギリギリを紙一重で攻めるVo.も一周回って好き。思わず体が動きます。 

*1:ちなみに3曲ともオリジナルとは別バージョンとなっています。リミックスというよりも別バージョン・Edit違い…といった程度の差ですが。

*2:リミックス請負業者とでもいうべきでしょうか。どういうグループなのかはコチラ→Razormaid! - The Art and Popular Culture Encyclopediaを参照。

Ministry - In Case You Didn't Feel Like Showing Up/Live Necronomicon

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 Download Festivalでついに25年ぶりの来日が実現…と思いきや、昨今のコロナ禍の煽りを受けてまたしても*1中止となってしまったミニストリーの来日公演。そもそも日本でのフェス出演どころか、本国でのツアー開催*2も難しそうな状況となっており、なかなか厳しい状況です。とにかく今は「Stay Home」が至上命題、ライブやフェスはもってのほかということで…こうなったら出来ることはただ一つ、家でライブ盤を楽しむことだけですね(?)

 

 …というわけで今回は、この界隈なら知らない人はいないであろう、ミニストリーの最強ライブ盤を紹介。89年末~90年に行われた、"The Mind~"発表時のライブを記録したアルバムです。このツアーの音源については、同じ日の公演を記録したものが2種類発売されていますので、その両方を取り上げつつ比較してみたいと思います。

 

 このツアーでは、サンプリングや打ち込みを駆使した非人間的なスタジオ音源を再現するため、総勢10名というプログレバンド並みの大所帯でライブを敢行。結果、凄まじい熱量のライブアルバムが完成してしまいました。Bill RieflinとMartin Atkinsによるツインドラムと、最大4名のクォーター(?)ギターで繰り出される楽曲群は、どれもスタジオ音源を遥かに上回る音圧・迫力。重いというよりとにかく「厚い」です。ひとたびこれを聴いてしまったが最後、原曲なんて聴く気がしなくなってしまいますね(特に3rdの曲)。このライブで会得した音圧と熱量を、そのままスタジオ録音に持ち込んだのが次作"Psalm 69"だと個人的には思っていたり。この頃の彼らは間違いなく、世界最強のインダストリアル・メタルバンドでした*3

 

①In Case You Didn't Feel Like Showing Up (Live)

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 こちらが当初発売されたもの。実際のセトリからサイドプロジェクトの曲はごっそり削除され、随分とコンパクトな曲数になっています*4。VHSも同時にリリースされており、そちらには"Breathe"、"The Land Of Rape And Honey"、そしてビアフラによるスポークンワード"Pledge Of Allegiance"も収録されています。

 

 この作品に関しては、やはりVHSの映像が真骨頂。ただライブの模様を記録したビデオというよりも、PVのように様々なイメージ映像を挿入し、加工を施した*5プロパガンダというべき仕上がり。英語版wiki*6によると、89年12月31日*7と90年2月22日*8の2つの公演を組み合わせて映像を作っていて*9、メンバーもわざわざ服装を揃えて違和感を消しているという徹底ぶりだそう*10。ライブ映像自体にもネガポジ反転のような派手な処理が施されていて、各人の様子や演奏風景を楽しみたい人にとってはこの上なく見辛い映像になっています。しかしながら、この全容を把握できない荒い画質が、いかにもインダストリアルらしい不気味で危険な雰囲気作りに成功しているんですね*11。各所に暴行の様子や火だるまになる観客などが写っていますが、どこまでがフェイクでどこまでがガチなのか、見ていて判らなくなる瞬間が多々あります*12SPK的なインモラルと、メタル的エンタメを高度な次元で融合させた、至極のライブビデオと言えるでしょう。DVD化されていないのが残念ですが、YouTubeで全編見れるのでぜひ一度ご覧あれ。

 

Released Year:1990

Record Label:Sire

 

Track Listing

  1. The Missing
  2. Diety
  3. So What
  4. Burning Inside
  5. Thieves
  6. Stigmata

 

 Pick Up!:#6「Stigmata」

 ライブ本編のクライマックス。アルさんのヴォーカルにもかなり力が入っていて、要所で聞ける狂気的な叫びが強烈です。あと何といっても外せないのは終盤のアジテーションキリスト教徒、仏教徒ユダヤに始まりジョージ(パパ)ブッシュからゴルバチョフまで、全てに中指を立てていく姿は一周回って神々しさすら覚えます。まさに鳥肌もの。

 

②Live Necronomicon

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 で、こっちが2017年に突如リリースされたIn Case~の完全版。こちらは全て90年2月22日の音源で、In Caseでは削られていたサイドプロジェクト等の曲を含め、80分以上に及ぶセットリストをフル収録しています。といいつつ、この日演ったはずのRevolting Cocksの曲"Stainless Steel Providers"は漏れていますが…。これについては、リヴコのシングル"Beers, Steers & Queers (Remixes)"に、"Public Image"と共に収録されています*13。というかこの音源、ミニストリーのライブだったんですね。リヴコのツアー音源かと思ってましたよ*14。あと、ビアフラのスポークンワードもオミットされてます。

 

 音質に関しても当然リマスター済みで、各楽器パートの分離がクリアになっていますが、それ以上に驚くのが演奏そのものの差異。"Breathe"の冒頭ドラムソロに始まり、"The Missing"のイントロとコーラス部分の音程、"Thieves"のヴォーカル処理…本当に同じ音源か!?と問い詰めたくなること請け合いです*15。上でIn Caseは「加工されたプロパガンダ」と書きましたが、映像だけでなく演奏そのものもアルさんによって相当に手を加えられていたことが判ります。それもNINのライブ盤*16のように純然たる音質向上のためではなく、ライブ特有のミスや演奏のブレなどを都合よく修正した、言ってしまえば荒隠しの小細工。特にヴォーカル部分へのイコライジング処理が多い印象です。ヴォーカリストが入れ替わる割には声質が変わらないな~とは思ってたんですけど…。そんなわけで、良くも悪くも当時のバンドのありのままを捉えた、In Caseの伝説…もとい幻想をぶち壊す内容になっています。

 

 特に差が歴然としているのが"Stigmata"で、あのド迫力のパフォーマンスはどこへやら…といった感じです。最後の怒涛のアジテーションも、実際にはそこまで覇気がなくてなんだか興ざめ。もっと酷いのが"The Power Of Lard"で、肝心のビアフラ先生が曲のスピードについてこれず、後半はかなーりグダグダな演奏になってます(苦笑)。まぁLARDの曲はビアフラがゲスト参加した数回の公演でしか披露されていないので、バンドとしてもリハ不足、且つ息が揃わないのは仕方ないとは思うんですが…。これはIn Caseで外したのも納得です。

 

 しかしその一方で、こちらの方が輝きを増している曲も多数あります。中盤のPailheadのカヴァーは原曲超えのカッコよさですし、アンコールの"The Land Of Rape And Honey"では人力のノイジーなサンプリングが加わり、スタジオ盤とはかなり違った表情を楽しむことができます。また"So What"と"Burning Inside"はギターの音が整理されていない分、電ノコのようなリフの生々しさ・殺気が前面に出た仕上がりになっていて最高。In Caseとは迫力が全然違います。"Smothered Hope"と"Thieves"では、ミニストリーの鬼ハードコアな演奏にパピーのOgre兄さんのウゲウゲ声という組み合わせが聴けるだけでもう5000兆点。今やミニストリーの顔ともいえる曲になった"Thieves"も、オーガさんのVo.だとだいぶ印象が違って新鮮ですね。

 

 In Caseという作為的なプロパガンダの裏側を垣間見れるという点で、ファンにとってはかなり興味深い資料ですし、単純なライブ音源としても十分にアピールポイントを持つ内容だと思います。In Caseについても上ではちょっとネガティブな書き方をしてしまいましたが、最終的にカッコいいものが出来上がってるので手を加えたこと自体を批判するつもりは毛頭ありません。結果良ければすべてよし。ということで、両者違った良さがあるのでどちらをお勧めするかはかなり甲乙つけがたいんですが、個人的にはIn Caseを履修してからNecronomiconを聴いた方がより楽しめると思うので、余裕がある方はぜひ両方聴いてみては。

 

Released Year:2017

Record Label:Cleopatra Records

 

Track Listing

  1. Breathe
  2. The Missing
  3. Deity
  4. Man Should Surrender
  5. No Bunny
  6. Smothered Hope
  7. So What 
  8. Burning Inside
  9. Thieves
10. Stigmata
11. Public Image
12. The Power Of Lard
13. Hellfudge
14. The Land Of Rape And Honey

 

 Pick Up!:#6「Smothered Hope」

 やはり私としてはこの曲が外せません。初期スキニー・パピーの代表曲を大胆にスピードアップ、ハードコアにアレンジしたカヴァー。スタジオ音源はシングル"Burning Inside"のB面に収録されていますが、このライブ版ではさらにテンポがアップし、オーガさんのヴォーカルはもはや早口言葉の域に。まさに"Rabies"での狂気的なテンションの再来です。中期のパピーは好きだけど初期はちょっと…という人も、これなら聴けるんじゃないでしょうか。

 

*バンドメンバーについて

 本文で当然のようにラインナップの話をしてしまいましたが、そもそもアルとポール以外のメンバーなんて知らねぇよ!という人が大半だと思うので、つべのVHS映像から抜き出した画像付きで各メンバーも簡単に紹介したいと思います(上手くキャプチャできなかった人もいますが…)。もう見飽きたという人も、これを参照しつつビデオを見返すと新たな発見があるかもしれません。以下、クレジットも添えつつ。

 

Personnel

f:id:giesl-ejector:20200418151505j:plainAl Jourgensen – vocals, guitar 
みんな大好きアルおじさん。このビデオではテンガロンハットがトレードマークです。

 

f:id:giesl-ejector:20200418151541j:plainPaul Barker – bass, keyboards 
単身ベースでバンドの屋台骨を支えております。ここまで周りがコワモテばかりだと、この人の知的なルックスがより際立ちますね。

 

f:id:giesl-ejector:20200418151620j:plainTerry Roberts – guitar 
ギタリストその①にしてテンガロンハットその②。この人の立ち位置はアルさんの右隣なのでビデオに映ることも多く、見た目的にも判別しやすいです。

 

f:id:giesl-ejector:20200418151647j:plainWilliam Tucker (右) – guitar
ギタリストその②。立ち位置はステージ上手。後にPigfaceやKMFDM等にも参加しており、インダストリアル界隈ではよく名前を見かける人ですが、ヘロイン中毒が原因で1999年に他界しています。

 

f:id:giesl-ejector:20200418151705j:plainMike Scaccia – guitar
 ギタリストその③。立ち位置はステージ下手。一番メタルっぽいルックスからも判る通り、ミニストリーに速弾きギターソロを持ち込んだのはこの人です。このツアーで初めてミニストリーに帯同し、以降2010年代まで断続的にバンドに参加していましたが、2012年にライブ中の心臓発作で他界。このショックでアルさんが一時ミニストリーの解散を宣言したほど、貢献度が高かった人です。
  

f:id:giesl-ejector:20200418151802j:plainBill Rieflin – electric drums 
ドラマーその①。ミニストリーのサイドプロジェクトのほとんどに参加していた裏の立役者。ダンディなスーツ姿で機械のように淡々とエレドラを叩く姿が滅茶苦茶クールです。アルさんによれば、「この時のリーフリンにはメトロノームのような役割を果たしてもらった(ので申し訳なかった)」そうで、まさに名実共に人間ドラムマシンだった模様。

 

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Martin Atkins – drums
ドラマーその②。元Public Image Ltd.で自レーベルInvisible Recordsのオーナー。金髪とボーダーシャツがトレードマークで、このファッションはなぜかPigfaceやKilling Jokeでも統一されていました。リーフリンとは対照的に、ヘドバンしまくりの激しいドラミングが特徴的で、この二人のスタイルの対比も見どころの一つです。

 

f:id:giesl-ejector:20200418151922j:plainChris Connelly – keyboards, vocals ("So What", "Public Image")
 ゲストヴォーカルその①。元Fini Tribeで、ビル・リーフリンと並びミニストリーのサイドプロジェクトでは常連だった人です。こちらのドレッドヘアー+スーツというスタイルも大好き。So Whatでのパフォーマンスは必見です。

 

f:id:giesl-ejector:20200418151949j:plainNivek Ogre (奥) – keyboards, guitar, vocals ("Smothered Hope", "Thieves", "The Land Of Rape And Honey")  
ゲストヴォーカルその②。ご存じ我らがスキニー・パピーのヴォーカリスト。1988年のミニストリーのツアーにも参加していました。本家と違い、ゲスト参加だと血みどろにならないので()、普通にイケメンな立ち姿が拝めます。「FUCK ART LET'S KILL」シャツにも注目。

Joe Kelly (手前) – vocals ("Man Should Surrender", "No Bunny", "Thieves")  
ゲストヴォーカルその③。シカゴでLost Causeというパンクバンドを率いていたようで、どういう経緯か不明ですがミニストリーに参加。"Thieves"のスタジオ盤でもバックヴォーカルでクレジットされています。 

 

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Jello Biafra – spoken word(video only), vocals ("The Power Of Lard", "Hellfudge")   
ゲストヴォーカルその④。説明不要、元Dead KennedysAlternative Tentaclesレーベルの総帥です。英語をロクに聞き取れない私でも引き込まれてしまう、キレッキレの演説は流石の一言。LARDのパフォーマンス映像も見たいなぁ…。

 

 

 最後に、今年の3月24日に惜しくも亡くなったビル・リーフリンに、哀悼の意を表して本記事を締めたいと思います*17Twitterでも呟きましたが、全盛期のミニストリーはこの人のドラミング無しには成立しえないものだったと思っているので。Ministryに限らず、Revolting Cocks始め多数のサイドプロジェクトでのプレイも大好きでした。どうか安らかに。R.I.P.

 

*1:過去にはラウドパーク'06で来日予定だったものの突然キャンセル、さらに遡ればPsalm 69の頃から来日決定!→キャンセル…を繰り返していたらしいです。

*2:ちょうど今回取り上げているツアーの30周年記念で、前座にKMFDMとFront Line Assemblyという超豪華ラインナップのツアーを予定していたんですが、うーん… https://www.axs.com/ministry-announces-2020-the-industrial-strength-tour-138777

*3:一応断っておくと、私は"Filth Pig"も大好きな人です。あくまでライブバンドとしてこの時のラインナップが最強という意味ですので念のため。

*4:版権の問題もあると思いますが、恐らくはLP盤を2枚組にしないための措置。

*5:実際、シングル曲についてはPVがそのまま使用されています。

*6:コチラを参照のこと。→In Case You Didn't Feel Like Showing Up - Wikipedia

*7:実際のセトリ→Ministry Concert Setlist at Riviera Theatre, Chicago on December 31, 1989 | setlist.fm

*8:実際のセトリ→Ministry Concert Setlist at Star Plaza Theatre, Merrillville on February 22, 1990 | setlist.fm

*9:これが映像のみを指しているのか、音源も2日分を組み合わせているのかは不明。

*10:これにメンバーがイラついていたというのも面白いですね。ビデオの監督に強要されたんでしょうか。

*11:もちろん、かがり火と金網を並べたセッティングに、ツインドラム含む総勢10名のパフォーマーが暴れまわる時点で、すでに絵面として最強なんですが。

*12:というか、ステージ上の金網前で暴れまわる観客については、恐らくこの日のビデオ撮影のためのサクラ。別の日に録画されたブート映像(Ministry - Live In Dallas 1-28-90 (1990, VHS) | Discogs)ではステージ上に登る観客は確認できませんし。このライブビデオ中でも、はっちゃけ過ぎてスタッフに制止されている姿が散見されます。

*13:"Public Image"についても、このシングル版ではイントロにサウンドチェック(便宜的に"Country Interlude"とも呼ばれています)が入っており、さりげなくエアロスミスのリフを弾いてたりするのが興味深いです。Necronomiconで削られてしまったのが残念。

*14:どっちにしたところで演奏者は変わらないんですが。

*15:先述した通り、In Caseでは2日分の音源を組み合わせている可能性があり、演奏が違う曲=89年12月31日の音源ということも考えられます。"Thieves"については、ビデオではNivek OgreとJoe Kellyが2人で歌っている様子がはっきり映っているんですが、Necronomiconではどう聞いてもOgreのヴォーカルしか聞き取れませんね。

*16:And All That Could Have Been。偏執狂のトレントさんが弄り倒した結果、ツアー終了から丸一年以上経ってようやく発売に漕ぎ着けたというアレ。

*17:ミニストリー、R.E.M.、キング・クリムゾンで活躍したドラマーのビル・リーフリンが59歳で逝去。その半生を辿る

Riki - Riki

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  LA出身のミュージシャン/ヴィジュアルアーティスト、Niff Naworによるシンセポッププロジェクトのデビューアルバム。この人は元々デスロック・アナーコパンクと呼ばれるジャンル方面で活動していたらしく、Crimson Scarletというバンドでキーボードを担当していた模様。しかしこのソロデビュー作では、全くパンキッシュな印象が感じられない、耽美なシンセポップを奏でております。

 

 所属レーベルは本ブログでも何回か登場しているDais Records。ということで(?)、このアルバムも例に漏れず80年代回帰な作風です。それもキラキラした軽いシンセポップではなく、ちょっとビート太めなエレボ風味。1曲目から打ち込みドラムがビシバシ言わせております。3曲目なんて"Body Mix"と来てますし*1。ただ、あくまでそこに乗るVo.は甘く、コクトーツインズのような妖しさと浮遊感が特徴的です。この声が通常シンセサイザーが担う部分を肩代わりしている印象もあり、そのせいかシンセポップと言いつつシンセサイザーによるメロディ装飾は控えめ。いい意味でチープかつシンプルな構成となっています。

 

 特にリードトラックとなった#2は、インタビューで"super italo"と言われるほどに*2「まんまイタロ(ディスコ)」らしいのですが、イタロというものを知らない筆者は「DAF+Toni Holiday」*3としか聞こえませんでした。軽快なようで妙に肉感的なシンベ、バタバタと跳ねるドラムマシン、冗談みたいなセンスのPV…聴けば聴くほどDAF。この曲の歌詞、要は「なんて魅力的な男。抱いて!」という感じの内容なんですが()、男性性への憧れを男性視点で描いたのがDAF、女性視点で描いたのがRiki…と捉えることもできるかも。#1,3ではドイツ語の歌唱も披露しているので、余計にNDWっぽい印象を受けるのかもしれませんね。

 

 Curveを「ゴスい女性Vo.と90年代インダストリアルロック(およびシューゲイザー)の融合」とするならば、Rikiは「ゴスい女性Vo.と80年代プレEBMの融合」という感じでしょうか。アルバムの流れとしてはもう少しアップテンポの曲が欲しい感じもありますが、初のフルアルバムと考えれば十分すぎる内容でしょう。Daisのアーティストは、みな80年代への愛と音の再現度合いが徹底しているのが素晴らしいところ。今後の活動も要注目です。

 

 ちなみにNiff NaworはルックスもちょっとToni Holidayっぽい印象。ジャケは本人のご尊顔ですが、このスージー・スー風の山姥みたいな写真はいただけません。PVを見てもらえばわかりますが、素の映りではもっと綺麗な人です。特に#5のPVは殺傷力高めなので…是非一度ご覧あれ。(何の話?)

 

Released Year:2020

Record Label:Dais Records

 

Track Listing

  1. Strohmann
  2. Napoleon
  3. Böse Lügen (Body Mix)
  4. Know
  5. Earth Song
  6. Spirit Of Love
  7. Come Inside
  8. Monumental

 

 Pick Up!:#5「Earth Song」

  アルバム随一のアップテンポ曲。全編にわたりポストパンク風にドライブするベースラインが気持ちいいですが、哀愁漂う下降気味のメロディラインがまさに一撃必殺級。私はこれにノックアウトされてアルバムを買いました。控え目に散りばめられたオルゴール風のシンセもいい感じ。ちなみにこの曲、プロデューサー/シンセ奏者として、Skinny Puppy界隈ではおなじみのKen Marshallが参加しています*4。こんなところで名前を見かけるとは…予想外の発見でした。

*1:この曲はアルバム発表前のシングル"Hot City"に収録されていた曲のリミックスです。

*2:こちらのインタビューより。→ https://www.post-punk.com/let-your-heart-show-an-interview-with-new-wave-warrior-riki/

*3:ご存じCurveのヴォーカリスト。日本だとAcid Androidへの客演でも有名でしょうか。

*4:Discogsのクレジットより。→https://www.discogs.com/Riki-Riki/release/14792995