Skinny Puppy - Remission

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Released Year:1984

Record Label:Nettwerk

 

Track Listing

  1.Smothered Hope

  2.Glass Houses

  3.Incision

  4.Far Too Frail

  5.Film

  6.Manwhole

  7.Ice Breaker

  8.Solvent

  9.Sleeping Beast

10.Glass Out

11.…Brap

 

 自主制作のデモテープ"Back & Forth"に続きリリースされた、彼らのデビュー作品。当初は6曲入りのEPという形式でしたが、翌年に発売されたカセットでは5曲のボートラが追加されアルバム並みのボリュームに。現行のCDはこのカセット版に準拠した曲順となっています*1

 この頃の彼らはインダストリアル/EBMというよりも、ちょっと暗くて不気味なシンセポップ/エレクトロファンクといった雰囲気。ピコピコしたシンセのメロディーも比較的キャッチーで、全盛期の彼らの音を想像していると間違いなく肩透かしを喰らいます。じゃあ聴くに堪えない黒歴史かというとそんなことはなくて、同時期の(まだアイドル路線だった)Ministryあたりと比べるとチープながらも洗練された音使いを見せているのが興味深いところ。あとオーガさんの特徴的なウゲウゲ声も、彼らの独自色を打ち出すと同時にB級ホラー臭を引き立てるのに貢献していますね。個人的には、現在に至るまでライブの定番であり続けている#1や、全キャリアの中でも最もポップな部類に入る#4が超お気に入り。

 また、後半の曲は比較的実験色が強く、後のインダストリアル路線への萌芽も垣間見ることができます。#2のダブバージョンといえる#10ではOn-UによるDepeche Modeのリミックスワークを思わせる解体ぶりを見せていますし、#11ではお得意のホラー映画サンプリングが光ります。"Bites"収録曲の別テイクである#5~7も適度にアルバムの流れを淀ませている印象。全40分と手頃なボリュームであり、歌ものと実験インストのバランスも程よいので、個人的には1stアルバムの"Bites"よりも聴きやすい内容かと思います。

 余談ながら、#1と#4は一応PVが製作されています(同一のライブ映像を基にした低予算なものですが...)。初期のポジパンライクなルックスが拝めるのもさることながら、SPKみたく火花飛ばしてみたり、オーガさんが頭突きでガイコツ叩き割ってたりと、デビュー当時からステージパフォーマンスを重視していた事がよく分かるという点でも貴重です。

 

 ハードコアでノイジーな音を求めている人には受けない内容だと思われますが、プレ・EBMなエレポップやポストパンク系が好きな人にはお勧めです。むしろ最新作はこの頃の音に回帰している節もあるので、そういった資料的な意味で重要かも。

 

Pick Up!:#4「Far Too Frail」

 #1と並び、シングルカットはされていないけど、シングルベストに収録されたりPVが製作されたりと「事実上のシングル扱い」な1曲。鐘の音を思わせるシンセと早口言葉みたいな節回しが癖になります。

*1:当初は単体でCD化されておらず、1stアルバムと抱き合わせたコンピとして流通していました。これもレーベルによって2種が存在し、タイトルと収録曲がちょっとずつ違うという曲者です。具体的にはNettwerk盤が"Bites and Remission"、Play It Again Sam盤が"Remission & Bites"。ややこしや....。