Klute - Excluded

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Released Year:1992

Record Label: Zoth Ommog

 

Track Listing

  1.No Man’s Land

  2.I Wanna Fuck Now!

  3.Me, Myself And No One Else

  4.Cutthroat

  5.Run!

  6.Shotgun Blues.

  7.Guilty

  8.Incest

  9.I’ll Never Be Your Slave

10.Tequila Slammer

11.Desert Storm*日本盤ボーナストラック

12.No Remorse*日本盤ボーナストラック

 

 デンマークのエレクトロ・インダストリアルユニット、Leaether Stripのサイドプロジェクトの1stアルバム。中の人はレザストと同じくClaus Larsen唯一人で、ゲスト参加などはありません。ちなみに、90年代までは"Klute"名義で活動してましたが、後に同名のトランス系ユニットが出現したため(クラウス曰く「名前を盗まれた」)、2006年の活動再開以降は"Klutæ"という表記になっています。

 

 サイドプロジェクトということで、あくまで100%エレクトロニックだったレザストとは大きく異なり、メタルギターをガシガシ効かせたインダストリアルメタルを展開しています。当時アメリカを中心に勃興しつつあったインメタブームに影響されたんでしょうか。奇跡的にアルファから国内盤が出ていたおかげで、日本では下手すると本家よりも知名度が高いかもしれません。実際、私もクルート経由でレザストを知りましたし。​

 

 国内盤の帯の売り文句は"「制 御 不 能 !!」。本作品の内容をよく表した、いいコピーだと思います。解説はいつもの小野島先生ですが、あまりに破壊的な音に感化されたのか、ちょっと文章も壊れ気味(汗)。とはいえ、ふざけてるように見せてきちんと触れるべきところには触れているのはさすがですが。「おれは生き残る、必ず。」

 

 当時、日本の関係者の間では「ドイツのミニストリー」の2つ名で通っていたらしく(おそらくドイツのレーベルに所属という所から)、帯にもそう書かれていますが、ライナー本文中でデンマーク出身であることがきちんと指摘されてるんですから、その辺しっかりしてもらいたいものです。おかげで今でもドイツ出身と誤解されてる節があるような...まぁどっちだっていいんですけど。

 内容は帯の通り、まさにぶっ壊れた機械が暴走しているような、マシーナリーな音の塊。よくミニストリーやNINを評して「無機質、人間味の無い」という表現が用いられますが、これを聴いた後だとミニストリーですらだいぶ血の通った音に聞こえてきます。全部の音にディストーションをかけたんじゃないかというほど派手なエフェクト処理が施されており、ノイズの壁と化したメタルギターに割れまくりのスネアドラム、そして聞き取り困難なザワザワヴォーカルがゴチャゴチャに混ざり合い、潰れた状態で飛んでくるという拷問のようなシロモノ。さらにリズム面も、他のロック的なグループに比べると独特で、ジェットコースターのように目まぐるしく変動。意図的に反復を避けているかのような構成は、ちょっとプログレじみている印象すらあります。この辺りの変幻自在さはやはり打ち込みの特権ですね。

 

 ただ、シリアス一辺倒というわけでもなく、#6や#10*1ではコミカルな一面も覗かせるなどなかなか多彩で、いい意味で一筋縄ではいかない構成になっています。クラウス本人曰く、「クルートでの音楽性はレザー・ストリップよりもユーモアを含んでいる」そうですが...うーんこれをユーモアと言っていいものなのか()

 

 ドイツと日本では上のジャケで発売されましたが、Cleopatraから発売されたUS盤ではジャケが変更されたほか、収録曲・曲順が大幅に入れ替えられています。スローテンポ寄りの曲をごっそり排除し、デビューシングル"Explicit"から3曲と、コンピ"Technopolis 4"に提供した"Nosecandy (Feed 'em Mix)"(レザストの曲をメタル風にアレンジ・再録したもの)を追加。結果として、オリジナル盤よりも疾走パートの時間が増え、アルバムとしても風通しが良くなりました。なお、ここで外された曲とその他コンピ提供曲は、同じくCleopatraから出た"Excepted"というEPにまとめられています。したがって、Cleopatra盤のアイテム2つを買えば、デビューから"Excluded"までの全ての音源を揃えることが可能です。

Pick Up!:#2「I Wanna Fuck Now!」

 単調なハンマービートとナタのように振り下ろされるギターノイズが無慈悲な雰囲気を盛り上げますが、なんといってもコーラスで登場するシンセのメロディが素晴らしい。ポップでも哀愁でもないんですが、何とも言えない背徳的な高揚感を煽る旋律にゾクゾクします。インダストリアルメタルでありながら、ギターリフではなくシンセサイザーを主役に持ってくるような構成は、さすがEBM畑出身という感じがしますね。

*1:後者はカバー曲らしいのですがクレジット等は一切見当たらず、元曲が何なのか発見できませんでした...。ご存知の方いたら教えて下さい。