Scorn - Vae Solis

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Released Year:1992

Record Label:Earache

 

Track Listing

  1.Spasm

  2.Suck And Eat You

  3.Hit

  4.Walls Of My Heart

  5.Lick Forever Dog

  6.Thoughts Of Escape

  7.Deep In - Eaten Over And Over

  8.On Ice

  9.Heavy Blood

10.Scum After Death (dub)

11.Fleshpile (edit)

12.Orgy Of Holiness

13.Still Life

 

 元Napalm DeathMick HarrisNic Bullenによるユニットの1stアルバム。

 

 私も詳しくはないんですが、Napalm Deathというバンドはかなりメンバーの出入りが激しかったようで、調べていると頭がグルグル...。ざっくり言うと、1stアルバムの"Scum"(ギネスで有名なあの曲も収録)のA面12曲を録音した際のメンバー構成が、Nic Bullen(Vocal/Bass)、Justin Broadrick(Guitar)、Mick Harris(Drums)の3人。その後、NicとJustinは方向性の違いからバンドを離脱し、Mickは別のメンバーを迎えてバンドを続けますが、結局彼も方向性の違いから後に脱退。元同僚のNicに声を掛けてスタートしたのが今回紹介するScornになります。

 

 何でわざわざこんな話をしたかというと、このアルバム、MickとNicの2人に加え、Justinをゲストに加えた上記の3人で製作されてるんです。そう、実質Napalm Death。だからといってブラストビートが炸裂するグラインドコアということはなく、Godfleshを思わせるミッド~スローテンポを中心とした音を鳴らしています。ただ、当時のGodfleshがドラムマシンを利用してミニマルで無機質な音を追求していたのに対し、Scornは生ドラムということもあってもう少し人間味があるというか、混沌としている印象があります。

 

 アルバム前半はわりとメタル色が強いものの、途中でいきなりテンポが変わったり、変拍子を取り入れてみたりと変幻自在で、時々挟まれる疾走パートはスリリングですらあります。一方、アルバム後半ではグッとテンポが落ちて、その後Mickが追求することになるダブの要素が顔を見せ始めます。これがまたズブズブな音で、地鳴りのような重低音にどっぷり浸かれます。特に#7の、タイトル通り何かに咀嚼されているような絶望感は強烈。またNapalm Death時代の曲をダブ解釈した#10などは、グラインドコアとはまた違うNapalm Deathの未来を見ているようで興味深いです。

 

 ダブとしては中途半端なのですが、このクロスオーバー感というかジャンルごった煮のカオスが個人的に大好き。次回作以降はJustinが抜けてギター要素がほぼ無くなってしまうので、メタルとダブの融合が聴けるのは本作のみです。GodfleshおよびJustin Broadrickのギターワークが好きな人、インダストリアルなダブを求める人はぜひ。

 

Pick Up!:#12「Orgy Of Holiness」

 #6のイントロ部分を引き伸ばした(あるいはこの曲の一部を#6に引用した?)、完全にメタル要素無しのダークアンビエント。ノイズ空間に虚しく響き渡るピアノの音が不気味ながらも幻想的。以降、この方向性は本格的に突き詰められることとなります。