Riki - Riki
LA出身のミュージシャン/ヴィジュアルアーティスト、Niff Naworによるシンセポッププロジェクトのデビューアルバム。この人は元々デスロック・アナーコパンクと呼ばれるジャンル方面で活動していたらしく、Crimson Scarletというバンドでキーボードを担当していた模様。しかしこのソロデビュー作では、全くパンキッシュな印象が感じられない、耽美なシンセポップを奏でております。
所属レーベルは本ブログでも何回か登場しているDais Records。ということで(?)、このアルバムも例に漏れず80年代回帰な作風です。それもキラキラした軽いシンセポップではなく、ちょっとビート太めなエレボ風味。1曲目から打ち込みドラムがビシバシ言わせております。3曲目なんて"Body Mix"と来てますし*1。ただ、あくまでそこに乗るVo.は甘く、コクトーツインズのような妖しさと浮遊感が特徴的です。この声が通常シンセサイザーが担う部分を肩代わりしている印象もあり、そのせいかシンセポップと言いつつシンセサイザーによるメロディ装飾は控えめ。いい意味でチープかつシンプルな構成となっています。
特にリードトラックとなった#2は、インタビューで"super italo"と言われるほどに*2「まんまイタロ(ディスコ)」らしいのですが、イタロというものを知らない筆者は「DAF+Toni Holiday」*3としか聞こえませんでした。軽快なようで妙に肉感的なシンベ、バタバタと跳ねるドラムマシン、冗談みたいなセンスのPV…聴けば聴くほどDAF。この曲の歌詞、要は「なんて魅力的な男。抱いて!」という感じの内容なんですが()、男性性への憧れを男性視点で描いたのがDAF、女性視点で描いたのがRiki…と捉えることもできるかも。#1,3ではドイツ語の歌唱も披露しているので、余計にNDWっぽい印象を受けるのかもしれませんね。
Curveを「ゴスい女性Vo.と90年代インダストリアルロック(およびシューゲイザー)の融合」とするならば、Rikiは「ゴスい女性Vo.と80年代プレEBMの融合」という感じでしょうか。アルバムの流れとしてはもう少しアップテンポの曲が欲しい感じもありますが、初のフルアルバムと考えれば十分すぎる内容でしょう。Daisのアーティストは、みな80年代への愛と音の再現度合いが徹底しているのが素晴らしいところ。今後の活動も要注目です。
ちなみにNiff NaworはルックスもちょっとToni Holidayっぽい印象。ジャケは本人のご尊顔ですが、このスージー・スー風の山姥みたいな写真はいただけません。PVを見てもらえばわかりますが、素の映りではもっと綺麗な人です。特に#5のPVは殺傷力高めなので…是非一度ご覧あれ。(何の話?)
Released Year:2020
Record Label:Dais Records
Track Listing
1. Strohmann
2. Napoleon
3. Böse Lügen (Body Mix)
4. Know
5. Earth Song
6. Spirit Of Love
7. Come Inside
8. Monumental
Pick Up!:#5「Earth Song」
アルバム随一のアップテンポ曲。全編にわたりポストパンク風にドライブするベースラインが気持ちいいですが、哀愁漂う下降気味のメロディラインがまさに一撃必殺級。私はこれにノックアウトされてアルバムを買いました。控え目に散りばめられたオルゴール風のシンセもいい感じ。ちなみにこの曲、プロデューサー/シンセ奏者として、Skinny Puppy界隈ではおなじみのKen Marshallが参加しています*4。こんなところで名前を見かけるとは…予想外の発見でした。
*1:この曲はアルバム発表前のシングル"Hot City"に収録されていた曲のリミックスです。
*2:こちらのインタビューより。→ https://www.post-punk.com/let-your-heart-show-an-interview-with-new-wave-warrior-riki/
*3:ご存じCurveのヴォーカリスト。日本だとAcid Androidへの客演でも有名でしょうか。
*4:Discogsのクレジットより。→https://www.discogs.com/Riki-Riki/release/14792995