2019年に買った新譜
音楽好きな人々の年末恒例企画といえば「今年のベストアルバム○○選」ですが、私はそもそも、自分が聴いた中からベスト盤を選出できるほどの数を聞いていないので、単純に「今年自分が購入した新譜」をそのまま列挙したいと思います。そう、これしか買ってないんですよ*1。しかも1つアルバムじゃないのが混じってるし。毎年のように購入する新譜が0枚だった自分からすれば、これでも随分な数なんですが...(言い訳)。あ、順番については自分が購入した順です。リリース順ではないので念のため。
それにしても全体的に黒い...彩度感ゼロ。
①Test Dept. - Disturbance
インダストリアル・パーカッションの代名詞的グループによる、約20年ぶりの復活作。ですが、蓋を開けてみれば、初期のような激烈ビートインダストリアルでも、90年代のゴアトランスでもない、意外と真っ当で地味~なボディ。彼らのキャリア中でも、ここまでEBMに近い音を鳴らしていたことは無かったんじゃないかという程です。ほとばしる熱量や派手な装飾も無いストイックな造りなのであまり評判は良くなかったようですが、これはこれでなかなか。個人的にゴアトランス期の音よりは全然アリです。
②Die Klute - Planet Fear
過去のレビュー記事はこちら。↓
当時のTLでは賛否両論だったのでレビューでも長ったらしく色々書いてますが、久々に聞き返しても「やっぱ言うほど悪くないんじゃ...?」という感想でした。飽きやすいし長く聞けるタイプのアルバムではないですが、即効性の塊なのでいつ聞いてもスッと入ってくる感じがします。年末に出たクルップスの新曲よりもこっちのほうが良い気がするなぁ...とか言うと各方面に怒られそうですが*2。
③Front Line Assembly - Wake Up The Coma
KMFDMと並んで現役を守り続ける大御所が、久々にRhys Fulberと組んでEBM路線に帰ってきました。DAFのRobert Görl(!)を始め多くのゲストを招いていますが、中身は相変わらずサイバーで肉厚なボディで統一されています。プロステップ風味のモダンな音使いでありながらオールドスクール感もあり、派手さはないものの安心感のある仕上がり。アルバム終盤のメロウな展開も良いですね。そんな中、カヴァー曲の"Rock Me Amadeus"は完全に今風のヒップホップで度肝を抜かれます。言われなきゃFLAが演ってるとは気付かないレベル(笑)。アルバムのランニングタイムは長すぎるしつまらない曲もあるんですが、それでもこの内容は90年代のFLAファンにも勧められるクオリティと思います。
④THE XXXXXX - THE XXXXXX
過去のレビュー記事はこちら。↓
「ソフバのようでソフバじゃない、少しソフバなバンド」。今年upしたレビューの中ではダントツにアクセス数が多かったですね。やはりイケメン俳優はファン層が厚い。
⑤V.A. - Industrial Accident: The Story Of Wax Trax! Records
2018年に公開された、Wax Trax!のドキュメンタリー映画のサウンドトラック。選曲に関しては既出曲3割・既出曲の未発表バージョン3割・完全未発表曲3割、という感じで無難にまとめていると思います。ミニストリー・リヴコ等、アルさん絡みの曲は安定の外れなしで流石といったところですが、バーカー兄弟による終盤の謎スコア曲はどうしようもなく退屈で、この辺り対照的です。個人的にはリヴコの未発表曲と、「Black Box」以来のCD化となる、Fini Tribeの"I Want More"を聞けたのが良かったです。後者のファニーなポップさはかなり個性的。
⑥Numb - Mortal Geometry
ある意味で今年一番衝撃的だったニュースは、このNumbの活動再開&新作発表でしょう。20年もの間沈黙を守っていたDon Gordonがどういう音を出してくるか、期待半分・不安半分だったんですが、出来上がった新作を聴くと...うーん何とも言えない。基本的にはFLAを彷彿とさせる今風のEBM路線で、丸々一枚エレクトロニカ、或いはダークアンビエントでなかったという点では一安心。ただ、かつての最大の特徴だったあの強烈なノイズ処理がほぼゼロなんですね。楽曲を聴いていると、きちんとダンサブルでノレる展開もあるし、インスト曲では昔から一貫している陰湿で邪悪なエッセンスを見せてくれるので、もう少しだけでもハーシュだったら...と思わずにはいられません。ただ楽曲の基礎の部分は悪くないので、あとは味付けの問題。とりあえずカナダにいようがベトナムにいようが*3、Don Gordonはこういう作品を作れるということは判ったので、願わくばこのまま活動を続けてほしいところ。できればConan HunterかDavid Collingsもベトナムに呼んでくれたら*4言うことないですね!(無茶振り)
⑦Drab Majesty - Modern Mirror
LA出身のニューウェイブ/ダークウェイブユニットの3rdアルバム。このグループは全然知らなかったんですが、TL上でいろんな方が絶賛されているのを見て"Ellipsis"を試聴したところ、イントロで一発KOされて購入。最近はこの手のダークウェイブのリバイバルが盛んなようですが、その中でも飛びっきり爽やかでポップな(それでいてきちんと暗くて哀愁もある)所が気に入りました。ギターの雰囲気がまんまキュアーのそれなのも、キュアー好きには堪りませんね。80年代への敬愛を感じさせつつ、単なる物真似に終わらない楽曲の個性とクオリティに圧倒されます。いやホント名盤ですよコレは。ダントツで今年のベストアルバム。
⑧Tempers - Private Life
こちらはNY出身のダークシンセポップデュオの3rdアルバム。Drab Majestyは素晴らしかったし、彼らが所属するDais Recordsにはインダストリアル系のYouth CodeやHIDE(X JAPANのhideではない)も所属しているということで、このレーベルで他にも何か面白い連中はいないかと探していて見つけたグループ。Drab Majesty同様に80年代風の音作りが光るんですが、こちらはゆっくり水の中に沈んでいくような、スローでムーディな雰囲気。温かみのあるシンセとエコーの効いたヴォーカルが、優しい暗闇に包まれるかのような安心感を与えてくれます。こちらもわりとハマってヘヴィロテしてました。ジャケットの通り、夜に部屋を暗くして聴きたい作品です。
番外編:SOFT BALLET - BODY TO BODY 30th Anniversary Remixes
これを「新譜」としてカウントするのはどうかと思いますが、Sound & Recording誌のソフバ特集号の付録CD。yukihiro、上田剛士、砂原良徳による"BODY TO BODY"のリミックスを3曲収録しています。今年はソフバデビュー30周年ということで各方面盛り上がっていましたね。私はアナログ再発もボックスセットもスルーしているミーハーですが、このリミックス盤は結構良かったと思います。3曲ともリミキサー各人の趣向が(いい意味で)はっきり別れていたのが、かつてのソフバの三者三様振りを見ているようで興味深かったですね*5。
今年は上記作品以外にも、ベテラン勢ではCubanateやcEvin KeyのDownload、そしてRammstein・KMFDM・Die Kruppsといったゲルマン組、Skold等が新譜を発表していましたね。Downloadはともかく、その他のインダストリアルロックはそこまでピンと来なかったかな...。決して彼らのクオリティが低いとは思いませんが、自分は単純にEBMやポストパンク寄りの音が好きなので、申し訳程度に電気処理が施されたメタルにはあまり惹かれないというのが本音かもしれません。あと、若手では前述のHIDE(X JAPANではない)も新作を出していた模様ですが、これについては去年出ていた1stの方が気に入ったのでそっちを買ってしまいました。なので今回は取り上げてません。
とりあえず総括ということでざっと書いてみましたが、やっぱり良かった作品についてはきちんとフルのレビューを書いてあげないといけませんね。書こう書こうと思いつつ時間ばかりが過ぎてしまってよくない...。
TLを見ていた方は薄々気付かれたかもしれませんが、今年度から定期的に収入が入る身分になりまして、それに伴って色々と生活環境が変わった一年でした。ブログの方も途中空白がかなり空いてしまいましたが、できれば最低でも月1ペースを維持したい...とは思っています。語彙力はいつまで経っても向上する気配がありませんが、こんな旧態依然としたブログでも、今後ともお付き合いいただければ幸いです。では、よいお年を~