THE XXXXXX - THE XXXXXX

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  山田孝之綾野剛内田朝陽という著名俳優3名によって結成されたバンド、THE XXXXXX(ザ・シックス)の1stアルバム。

 

 このバンドに出会ったきっかけは、ある日TLに流れてきた「ソフバにそっくり!」というツイート。そこに貼られていた#5のMVを見て「本当だwww」となり購入してみたんですが、これが単なるネタ枠に留まらない良作でした。

 

 あえて言ってしまえば「SOFT BALLETBUCK-TICK、THE YELLOW MONKEYSの最大公約数を取って、モダンなEDMでコーティングしたような」音。細部を見てみるとそこまで似てるわけでもないんですが、聞いた後はなぜかそういったバンドの印象が頭に残ります。ただこれは、音楽性に対しての(良い意味での)比喩であって、楽曲そのものは凡庸なフォロワーに留まらないハイクオリティなものです。というか、本当に俳優3人だけでコレ作ったの?と問い詰めたくなるレベル。

 

 前述のように特定のバンド・ジャンルを連想させる内容でありながら、本人たちとしては率直にロックをやろうと思ってレコーディングに取り組んでいたようで、その結果出力されたものがコレ、というのが非常に面白いですね。普通はラッドとかマンウィズのような感じになりそうな気もするし、その方が受けも狙えたと思うんですが...。とはいえ、アゲアゲ()のEDMあるいはアンビエントに寄りすぎて個人的にイマイチだった近年のminus(-)に比べ、エレクトニック主体でありながら明らかに「ロック」を志向したこのバンドの音は、自分の中にスッと入ってきた感があります。

 

 歌詞に関しては、「意味のない、ナンセンスなもの」という本人たちの言葉があるように、一聴しただけでは意味を図りかねるものが多いです。難解...というよりも不思議系、イメージ先行型といったところでしょうか。その一方で、管理社会を連想する#1、反戦的な#2、どことなく芸能界の闇を匂わす#7など、明らかに特定のメッセージ性を感じるものもあり、必ずしもナンセンスなだけではないようです。とにかく全体的に醒めた感覚があり、説教臭くない、押しつけがましくないところが好印象。これら歌詞も含め、耳触りの良いポップさ・ライブ映えしそうなノリの良さと、時折顔を覗かせるドロッとしたダークさのバランス感覚に優れた作品です。

 

 正直、今の邦楽シーンにおいて一部の現役ベテラン勢以外からこういった路線の音が飛び出すとは思ってもいなかったので、このアルバムがミーハーなファン*1に浸透していく様子をネット上で観測できるのはなかなか痛快です。ライブをやり終わってからバンド活動は一段落している様子ですが、是非とも活動を続けてもらってまた新曲を聴かせて欲しいですね。(3人のスケジュールを考えると難しそうではありますが...。)

 

Released Year:2019

Record Label:(self released)

 

Track Listing

  1. seeds (Remastered)
  2. horizon bloom
  3. second hand
  4. zealot (Remastered)
  5. チート
  6. amber 1800
  7. tut-tut
  8. 冷静に暴れていこうか
  9. end starter 

 

 Pick Up!:#9「end starter」

  アルバムの〆はミッドテンポの壮大な曲。無人の海岸や荒野を連想させるSEから始まり、重厚なドラムとエスニックな音のキーボード、そして達観したようなヴォーカルの組み合わせが何とも冷たく心地よいです。少しづつ音を重ねていきながらも熱を帯びずむしろ沈んでいくような曲調は、ちょっと"The Fragile"の頃のNINを連想させる部分も。とはいっても、あそこまでの希死念慮は見受けられず、最後のファルセットで繰り返される「愚かに生きよう」というフレーズは、諦観の混ざった力強さすら感じますね。

*1:音楽オタクではない普通の人」という意味合いで、あえてこういう書き方をしてます。