Peace, Love & Pitbulls - Peace, Love & Pitbulls

f:id:giesl-ejector:20180617051103j:plain

 

Released Year:1992

Record Label:Play It Again Sam, Nettwerk

 

Track Listing

  1.(I'm The) Radio King Kong

  2.Do The Monkey (Hitch-Hike To Mars)

  3.Dog Church

  4.Be My TV

  5.Reverberation Nation

  6.Elektrik '93

  7.What's Wrong

  8.Nutopia

  9.Futurehead

10.This Is Trash

11.A. Psycho

12.Do The Monkey (Remix)

 

 スウェーデンのインダストリアルメタルバンドの1stアルバム。

 

 このグループの中心人物であるJoakim Thåströmという人は、元々70年代後半からいくつかのバンドで活動を続けていたベテランで、スウェーデン国内ではそれなりの人気を得ていたようです。その頃の音楽性はPost-Punk/New Wave寄りで、(試聴する限り)インダストリアルの影も形もありませんでした。その後、1989年にバンドを解散してソロ作品を2枚ほど送り出した彼は、1992年にギタリスト2名とプログラミング・サンプラー担当を1名招き、新バンド:Peace, Love & Pitbullsを結成します。これは本格的な世界進出を見据えてのことだったようで...(だから今までと違ってタイトルも歌詞も全て英語)。実はこのアルバムも、スウェーデン国内ではThåström名義で発売され、国外でのリリースに合わせて名義をソロからバンドに変えた...という経緯を持ってたりします。

 

 で、これがまた大傑作。確かにこの時点で10年以上のキャリアを持っていたとはいえ、1作目でこの内容は快挙を通り越して異常です。きめ細かく計算されたサンプリングノイズ、マシーナリーでダイナミックな打ち込みドラム、分厚くへヴィでありながらフックのあるリフを奏でるギターと、曲を形作るバンドサウンドがしっかりしているのもさることながら、とにかくヴォーカルの迫力が素晴らしい。喉のどこからこんな声出してるんだと思わせる、J.G. Thirlwellを10倍ぐらい凶悪にしたようなダミ声だけで花丸をあげたい気分です。特に#1,2,5でのヴォーカリゼーションは圧倒的。かのマンソン氏が彼らの音に影響を受けたとする未確認情報もありますが、真偽のほどはともかく、さもありなんといったところ。

 

 強いて言えば、全体的にミドルテンポの曲が多く、終盤にかけてややダレ気味なのが難点でしょうか。あと超絶暑苦しいので、人間味の無い冷たい音を求める人には合わないかも。しかしそういった要素を加味したとしても、MinistryやNINがインダストリアルメタルを確立したのと同時期に、ここまで独自のスタイルを完成させていたとは驚異的と言うほかありません。一体何を参考にしてこのサウンドを構築したのか、あるいは何も参考にしていなかったからこそのこの音なのか...とにかく全インダストリアルファンは必聴です。マスターピース

 

Pick Up!:#1「(I'm The) Radio King Kong」

 引きずるような曲調の重々しいリードトラック。楽器隊は完全にバックに徹しており、粘着質に絡みつくヴォーカルが曲を引っ張っています。後半にかけてじわじわと怒りを放出していく歌い上げ方はお見事。プロレスの入場曲とかにしたら最高にフィットすると思うんですが、どうでしょう。