My Life With The Thrill Kill Kult - I See Good Spirits And I See Bad Spirits

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Released Year:1988

Record Label: Wax Trax!

 

Track Listing

​  1.Heresy

  2.X-Communication

  3.Do You Fear (For Your Child)?

  4.Easy Girl

  5.Universal Blackness

  6....And This Is What The Devil Does!

  7.These Remains

  8.On This Rack

  9.Gateway To Hell

10.Scene One, Seen 'Em All!!

 

 シカゴ出身のインダストリアル・ダンス系グループの1stアルバム。(私は未所持ですが)2004年にRykodiscからリマスターの上で再発されており、その際ボーナストラックが3曲追加されジャケも変更されています。上のジャケと曲目はオリジナル盤のもの。

 

 中心メンバーでヴォーカル担当のGroovie Mannは、Ministryをスタートする前のAl Jourgensenと一緒に、Special Affectというバンドをやっていたという経歴の持ち主。Wax Trax!所属組としては若干マイナーな立ち位置にありながら、KMFDMと同じく現在まで活動を続けているベテランです。ちなみに、ご覧の通りバンド名がクッソ長いので、前半部を省略してThrill Kill Kult、さらにその頭文字をとってTKKと呼ばれることも多いです。

 

 彼らを知っている人なら、メジャー移籍以降のエロエロハウス路線()が印象深いかもしれませんが、この頃はバンド名にそぐわないダークでカルトな音楽性でした。ハードな打ち込みドラムはまさしくEBMのそれですが、グルーヴィで癖になる人力ベースが、他のボディ系には無い生々しさと躍動感を与えています。そこにB級映画からとってきたとおぼしきサンプリングと、ねちっこく軋みまくり歪みまくりのヴォーカルが乗っかり、カルト教団の集会のような雰囲気を形成。"怖い"というよりとにかく"如何わしい"です。

 

 彼らが醸し出すこの異様なまでの胡散臭さ、Wax Trax!周辺やEBM界隈でもかなり異質で、どこ由来のものなのか今まで図りかねている部分がありましたが、最近Alien Sex Fiend*1を聴いてその謎が解けました。100円ショップの仮装グッズみたいなこけおどしのビジュアルに、真面目にやってるのかよくわからないカエル声ヴォーカル、そしてEBM顔負けの重い打ち込み...聴けば聴くほどTKKです。なるほど、このカルトな空気感はポジティブ・パンク由来だったんですね。そういえば、いきなりギターの早弾きで幕を開ける#2を始め、歪んだギターノイズも随所で派手にフィーチャーされてますし、そういうところにもパンクの影響を感じます。まぁ本人の発言とかがあるわけじゃないので100%憶測なんですが。

 

 Revolting CocksとAlien Sex Fiendを掛け合わせ、ついでにシカゴハウスを隠し味に加えた怪作。デビューアルバムということもあってまだ荒削りな部分も多いですが、以降ハウス要素が強まるにつれてポジパン成分は徐々に抜けていってしまうので、そういう意味では貴重な1枚かも。カルトでアングラな雰囲気を楽しみたい方にお勧めです。

 

Pick Up!:#4「Easy Girl」

 ファンキーなベースと能天気なホーンセクションが、場末のストリップバーを連想させる1曲。こういう曲やらせたら彼らの右に出るものはいませんね。あと時々挿入されるカシャカシャいうサンプリングが機械的でよい。

*1:英国のゴシック・ロックバンド。彼らの音楽性はメディアからポジティブ・パンクなどと呼ばれ、80年代中頃に1つのムーブメントを形成しました。そのうち当ブログでも紹介したいと思います。