Numb - Numb

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 カナダはバンクーバー出身のエレクトロ・インダストリアルユニットの1stアルバム。基本的にはDon Gordonという人が中心で、その他のメンバーは流動的です。ちなみにこの当時のメンバーは、Don Gordon(Producing), Dave Hall(Keyboards, Programming), Sean Stubbs(Drums, Vocal)の3人。プロデューサーはお待たせいつもの(?)Dave Ogilvieです。

 このアルバムは何度か再発されており、その度に収録曲が変わっています。元々は、限定版のカセットだった"Blue Light"に、新たにAnthony Valcicとレコーディングした3曲(#1, 2, 6)を加えたものが最初のリリース。この時はLP盤のみでの発売で全8曲でした。その後、92年にKK RecordsでCD化。この際、1st収録時のアウトテイク2曲(#9,11)が追加され10曲入りとなります。さらに98年にはMetropolisで再度CD化。これはさらにアウトテイク2曲(#10,12)が追加され12曲入りとなった上、全曲リマスターが施されています。ちなみに、それぞれのバージョンでジャケのデザインも微妙に変わってたり(上に示したのはMetropolis盤のジャケと収録曲)。というわけで、選べるならMetropolis盤を買ったほうがお得ですよ、というお話でした。

​ 肝心の中身ですが、これがデビュー作とは思えない音を出しています。87年といえば他のEBMバンドがようやく自らの色を確立し始めた頃ですが、それらと比較すると信じられないほどの充実度。プロデューサーがDave Ogilvieということでやはり初期Skinny Puppyっぽいのは確かですが、どちらかというとダークアンビエントな色が強いです。特に、アルバム終盤に収められたボートラにおける壊れっぷりとノイズの強度は、"VIVIsect VI"以降のパピーと比べても遜色ありません。かといって難解一辺倒ということもなく、#1, 3, 6ではダンサブルなEBMも飛び出します。特に#1は、強迫ビートの上にスピード感のあるギターノイズが切り込むアルバム随一のキラーチューンです。

 

 ややインストが多く、踊れる要素が薄めなのが難点といえば難点ですが、実験的かつアンビエントな雰囲気を楽しめる人には受ける音だと思います。全体的に冷たくホラーな感触は暑い夏にぴったり(?)。初期のパピーを聴いてぶっ壊れ具合が足りないと思った方、こっちを聴きましょう。

 

Released Year:1987

Record Label: Edge Records, World Records

 

Track Listing

  1. God Is Dead
  2. Eat Me
  3. Lies
  4. Guilt
  5. The Hanging Key
  6. Two Faces
  7. The Morality Of Attitude
  8. Blue Light, Black Candle
  9. Carcinoma Angels
10. Cell
11. Endless Decent
12. Fragmentation Ballet

 

Pick Up!:#5「The Hanging Key」

 Skinny Puppyの"Testure"を髣髴とさせる哀愁シンセと、Einstürzende Neubautenのような工業ノイズを両立させた至極の1曲。ノイズをバックにしたバラード(という表現が適切なのか微妙ですが)という意味では、ちょっとだけNINの"Something I Can Never Have"を連想させるところがあるかも。あちらよりは遥かにノイズの自己主張が激しいですが、そこがいい。